2020 Fiscal Year Research-status Report
抗原非依存型ダブルシグナルシステムによる老化粘膜免疫の再生
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20K20495
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤橋 浩太郎 東京大学, 医科学研究所, 特任教授 (50820354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中橋 理佳 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (80391887)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | アジュバント / 記憶免疫 / 肺炎球菌 / 分泌型IgA |
Outline of Annual Research Achievements |
老化による免疫力(ワクチン効果)の低下は肺炎球菌が原因である呼吸器感染症増加による、高齢者の死因に繋がっている。肺炎球菌では多くの血清型が存在し、既存の肺炎球菌ワクチンではカバーできない血清型置換が問題となっている。さらなる問題点は現在ライセンス化されている注射型ワクチンでは呼吸器感染症を防ぐ上で重要な役割を担っている粘膜防御[抗原特異的分泌型(S)IgA抗体]が期待できず、免疫力が低下している高齢者では十分な予防効果を発揮できないことである。そこで、細菌やウィルスの抗原に依存しない、申請者らが開発した樹状細胞(DCs)を標的としたダブルシグナルシステム(CpG ODNとFlt3リガンドcDNAプラスミドの併用, CpG/pFL)の経鼻投与によって、高齢者の弱減化しているメモリー粘膜免疫力(既存抗原特異的SIgA抗体)を向上させ、多種多様な呼吸器感染症から宿主を防御するための抗原非依存型広範囲呼吸器感染予防ワクチン開発の基盤構築を本研究申請の目的とする。本年度は、8-12週齢(若齢)のC57BL/6マウス(雌)に肺炎球菌(A66.1)を亜致死量(103)、経鼻肺感染させ、鼻洗浄液、血清を採取し、肺炎球菌の表面蛋白抗原(PspA)特異的抗体価をELISA法にて測定した。 亜致死量の経鼻肺感染ではPspA特異的抗体を誘導できなかった。 そこで2回目の亜致死量をおこなったところ、鼻洗浄液中SIgA、血清中IgG抗体が誘導された。 これらは、記憶免疫を確立させる今後の本計画の遂行に重要な基礎データであり、大いに意義がある。現在、抗体価の減少を確認し、ダブルシグナルシステム(CpG/pFL,実験群)の経鼻投与によって、PspA特異的抗体価の上昇が認められるか確認中である。これらの実験によって得られるデータは本研究の中枢課題を明らかにするものであり、重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、昨年4月に緊急事態宣言が発出され、新型コロナウイルス関連の研究以外は著しく制限された。本研究計画の採択は7月末に通知されたが、新型コロナウイルス感染の影響を受け、研究進捗に遅延が生じた。 肺炎球菌感染症の記憶免疫を確立するために、8-12週齢(若齢)のC57BL/6マウス(雌)に肺炎球菌(A66.1)を亜致死量(103)、経鼻肺感染させた。2、4週間後に鼻洗浄液、血清を採取し、PspA特異的抗体価をELISA法にて測定したが、1回の亜致死量の経鼻肺感染では特異的抗体を誘導できないことが明らかになった。そこで同量(103)のA66.1で再感染させ、4週間後にPspA特異的抗体価を測定したところ、鼻洗浄液中SIgA、血清中IgG抗体が誘導された。これらの結果により、亜致死量の肺炎球菌を2回感染させることで、記憶免疫が確立されることが明らかになった。現在、最終感染から3ヶ月後、6ヶ月後の抗体化の変化を観察中である。PspA特異的免疫応答が減少に転じた時点で、ダブルシグナルシステムの経鼻投与で記憶免疫が再活性化され、PspA特異的、鼻洗浄液中SIgA、血清中IgG抗体が誘導できるか検討する予定である。 記憶免疫の確立法として、経鼻ワクチンによる免疫誘導も検討した。PspAを抗原、コレラ毒素(CT)をアジュバントとし1週間ごとに3回経鼻免疫を行った。最終免疫から1週間後にPspA特異的免疫応答が誘導されていることが確認できたため、3ヶ月後、6ヶ月後の抗体価の変化を確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ダブルアジュバントシステムの経鼻投与のみで減弱化した記憶免疫が回復するか検討する。具体的に、肺炎球菌による感染、またはPspA経鼻ワクチンにより確立された記憶免疫が減弱化した時点でダブルシグナルシステムの経鼻投与する。1-2週間後に、鼻洗浄液、血清を採取しPspA特異的SIgA,IgG抗体価を測定する。感染防御能を解析するため、2週間後にはA66.1またはクレードの異なる2種類の肺炎球菌を致死量、経鼻肺感染させ、その生存率を7日間観測する。また、ダブルシグナルシステムの経鼻投与後、EF3030(クレード1)による鼻腔内限局感染法によって鼻腔内に残存する肺炎球菌を測定する。 ダブルシグナルシステムはポリクローナルに免疫細胞を刺激して慢性炎症反応、アレルギー反応、自己免疫抗体の誘導を起こす可能性がある。そこで、上記の実験でCpG/pFL経鼻投与後採取した鼻洗浄液、血清中の抗原非特異的IgG抗体、IgE抗体をELISA法にて測定する。また、炎症性サイトカイン(TNF-alpha,IL-1, IL-6, IL-17)、アレルギー性サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-9, IL-13, IL-33)をマルチサイトカイン定量キット(AimPlex)にて測定する。さらに血清中の抗核酸抗体やリウマチ因子IgG,IgM抗体をLBIS ELISAキットを用いて測定する。PBSのみ経鼻投与を対照群として上記の抗体やサイトカインが異常に上昇していないことを確認する。顕著な上昇が認められた場合は、それが一過性であることを確認するため、投与後2、4、6週間後に同様な解析を行う。
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Causes of Carryover |
本研究の開始は2020年8月であり、実際の研究期間が8ヶ月であった。さらに、新型コロナ感染症の蔓延により、関連する研究以外の研究活動に制限がある期間があり、予定していた研究計画がスムーズに行えなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)