2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K20496
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根岸 貴子 (古賀貴子) 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (90451905)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 骨粗鬆症 / 加齢 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会における2大疾患として、骨粗鬆症とアルツハイマー病などの認知症といった精神・神経疾患が挙げられる。どちらも加齢に伴うため併存する率は高いと考えるのは容易であるが、近年、骨と脳・神経系は相互に関連しあう可能性が見えてきた。骨組織には多数の神経投射が存在する。摂食を抑制するレプチンは、中枢神経系と交感神経系を介して骨形成を抑制する。また、さまざまな神経伝達物質(セロトニン、カテコラミン)や神経ペプチド)も骨代謝に影響を及ぼすことがわかってきた。一方、リハビリテーション(リハビリ)は、要介護状態前状態であるフレイルの進行を防ぐだけでなく、治療法のない認知症患者の記憶・学習能力を改善させるといわれている。初期の認知症に運動が適応となるのは、興奮等の問題行動を軽減させるだけでなく、運動が脳内アセチルコリンの分泌を促して海馬神経の増殖を高めるためでもある。しかし、運動器疾患と精神・神経疾患の両者が相互にそれらの発症にどのようにかかわるか、その病因は不明である。本研究は、加齢に伴う認知症の発症原因がどのように骨代謝異常(骨量低下)に結び付くのか、パーキンソン病、アルツハイマー病などのモデルマウス、自然老化モデルマウスの骨組織と脳内病態・認知学習能力の相関を明らかにすることにより、その共通原因またはそれぞれの病因について解析する。特に本年度は、アルツハイマー病モデルマウスの脳内アミロイドβ蓄積と骨代謝の状態を経時的に解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ヒト家族性アルツハイマー病原因遺伝子(APP; アミロイドβ前駆体)のノックインマウス3系統の骨代謝の解析に着手した。加齢に伴う認知症の発症と骨代謝異常の相関を明らかにするために、これらのモデルマウスの骨と脳サンプルを経時的に採取し、脳のアミロイドβ蓄積の有無を組織解析により明らかにし、同マウスの骨を用いてμCTによる骨構造解析や骨組織解析を実施し、両者の発症時期を解析した。コロナ禍による研究室への入室制限や実験動物飼育制限等が研究推進に影響を及ぼした可能性はあるが、おおむね進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
認知症モデルマウス(特にアルツハイマー病モデルマウスを用いて)の骨組織および脳組織の、経時的かつ網羅的な遺伝子発現解析・プロテオーム解析を実施し、骨代謝異常と認知・学習能障害の発症前後のプロファイルを相互に比較し、両者の発症に関わる因子の同定に結び付ける。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究室への研究員の出入り制限、動物飼育制限などにより、予定した遺伝子改変動物の繁殖時期が大幅に遅れた。そのため、それを用いた研究が開始できなかったため、次年度使用額として算出した。
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Research Products
(7 results)