2021 Fiscal Year Research-status Report
高精度微細加工によるX線光学系による時間領域天文学の革新
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20K20525
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
米徳 大輔 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40345608)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | X線光学系 / 微細加工 / ガンマ線バースト / X線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に製造したロブスターアイ光学系の評価を目的とした真空チャンバー内の微動ステージを拡張し、高さ方向に対しても稼働できるように整備した。これにより、軸方向(焦点距離方向)、軸と垂直な面内での上下左右方向、および回転方向(X線の入射角度方向)について高い自由度を持った計測が可能となった。また、それに合わせて焦点面検出器も稼働できるようになっており、基本的な計測環境を整えることができた。 ウシオ電機社と共同でロブスターアイ光学系の試作モデル(ULEO αモデル)を製造した。このモデルは、当初の計画通りに平板ガラスに対して3次元のレーザー加工および磁気流体研磨加工を施している。特に、レーザー加工後のアニーリングの時間を十分に確保し、内在的な加工粗さを低減させた上で研磨するようにしている。テストピースを用いて電子顕微鏡にて加工状況を把握したところ、X線反射面の加工精度は12から15nmと良好であることが確認できた。 試作モデルは、スリット加工を施した光学系を直交させて2枚張り合わせることでロブスターアイ光学系として利用できるようにしている。顕微鏡写真からは応力歪と考えられる加工面の湾曲が確認されており、これがX線結像に対してどのような影響が出るかを定量化する必要がある。 今年度はX線測定環境の構築と試作モデルの製造に時間を要したため、試作モデルに対するX線照射実験までは至らなかった。次年度の課題として位置づける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、ロブスターアイ光学系の製造とビームラインによる評価を実施し、X線の結像性能と加工パラメータの間の相関を調べることとしていたが、測定環境の構築に時間を要したことと、試作モデルの製造に時間を要したことが理由で、X線を用いた評価に至っていない。一方で、これまでの試作の中で、光学顕微鏡や電子顕微鏡で加工の状況を把握できることがわかったため、X線を用いずに加工パラメータの調整を行ってきた。特に電子顕微鏡でX線反射面(内壁)の加工精度が12から15nm程度であることを見いだせたことは、当初の目標である10nmに迫る成果であると言える。 光学顕微鏡や電子顕微鏡のような代替手段を用いてはいるものの、本研究の目的であるX線評価が実施できていないことから、標記のような自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ロブスターアイ光学系のX線測定環境が整ったため、今後はX線ビームラインを用いた試作モデルに対する性能評価を行う。まずは単体のロブスターアイ光学系の性能評価を行い、結像性能、有効面積などの基本パラメータを調査する。その上で、2022年度の課題として掲げている小型のX線検出器ユニットを構成する。 これまでの研究から、1枚のロブスターアイ光学系を製造するための経費が高額となることが判明した。当初の計画のように3x3で配列したX線撮像検出器ユニットを製造することは経費の面で困難となる。しかしながら、複数のロブスターアイ光学系をアラインメント調整を行いながら配列する技術を確立する事が、今後のX線天文学や非破壊検査等で用いるためには必須であるため、最低でも2枚の光学系が同一の焦点像を結ぶ事を示したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度に実施予定であったX線ビームラインを用いた評価が行えなかったため、2022年度に実施するための実験治具の製造、協力者謝金、成果公表を行うために使用する。 当初、2022年度に実施予定であった小型X線検出器モジュールの開発は、2022年度分の研究経費で実施する予定である。
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Research Products
(5 results)