2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel wastewater treatment technologies by Mn-oxidizing bacteria using nature technolog
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20K20540
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大橋 晶良 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (70169035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田一 智規 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (10379901)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | ネイチャーテクノロジー / マンガン酸化細菌 / Mn酸化・還元 / 微生物 / 排水処理 / 資源回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物を利用した排水処理技術は,ここ数十年の間に徐々にではあるが進歩している。このようなことを述べると,排水処理技術は成熟したように感じられるかもしれない。しかしながら,手付かずの未解決の排水処理が残されている。従来の生物学的処理では金属,難分解性有機物,着色の排水に適用できない。これらの排水処理はお手上げ状態にある。 そこで本研究では,生物学的排水処理のブレイクスルーとなるネイチャーテクノロジー(自然模倣技術)を用いた新規排水処理技術の開拓に挑戦する。具体的には,マンガン酸化細菌と,この細菌が生成するMn酸化物を利用するネイチャーテクノロジーにより,手付かずの排水処理を解決することを目的としている。本研究の目的である,マンガン酸化細菌を利用した金属および難分解性排水の新規処理技術を構築し,従来とは異なる窒素処理および微生物による発電を提案し開拓するには,さらに科学および工学的アプローチの研究が必要であり,研究内容は次の4項目からなる。1. Bio-Mn酸化物の生成機構の解明とオーダーメイドの金属吸着・除去の把握,2. 難分解性物質の分解機構の解明,3. 新たな窒素サイクルを利用した新規窒素処理プロセスの開発, 4. 新規微生物燃料電池の開発。 令和4年度は,Bio-Mn酸化物の生成機構,難分解性物質の分解機構,新たな窒素サイクル現象,新規の微生物燃料電池の4項目について実施した。その結果,次のような基礎的な知見を得た。有機物濃度が小さい時にMn酸化が起き,その時にマルチ銅酸化酵素が発現することを発見。Mn酸化物による染料の分解生成物は嫌気条件でも生物学的に分解される。海水では嫌気性環境下でアンモニア酸化の現象は確認できなかった。新規の微生物燃料電池による処理性能を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マンガン酸化細菌を利用した排水からの金属回収,難分解性排水処理,窒素除去,発電の新規処理技術を開拓し構築するには,科学および工学的アプローチの研究が必要であり,4項目の実施において,それぞれ次のような成果を得た。 1.Bio- Mn酸化物の生成機構の解明とオーダーメイドの金属吸着・除去:マンガン酸化細菌であっても有機物濃度によってMn酸化速度が異なる結果を得ている。この結果を受けて,分離したマンガン酸化能力の高い純菌を用いて,有機物濃度が異なる条件下でのマンガン酸化および還元に関与する遺伝子発現をトランスクリプトーム解析により実施した。その結果,有機物濃度が低い時にはMn酸化が起き,高い時には逆にMn還元が起き,それぞれマルチ銅酸化酵素と鞭毛発現関連酵素が発現していることが明らかになった。 2.難分解性物質の分解特性:嫌気環境下ではアントラキノン染料を直接に分解することができなかった。しかし,好気条件と同様にMn酸化物によって分解されるアントラキノン染料の分解生成物は,嫌気環境下でもさらに分解除去されることが分かった。 3.新たな窒素サイクルを利用した新規窒素処理プロセスの開発:淡水での新規の嫌気性アンモニア酸化細菌の集積培養を実施し,新規の分離培養を試みたが,分離には至っていない。一方,海水で嫌気性アンモニア酸化処理をDHSリアクターで連続運転したが,反応は見られなかった。しかし,好気条件において,アンモニア酸化のみならず,脱窒の同時反応が起きることが分かった。 4. 新規微生物燃料電池の開発:一槽型のMn酸化物をアノード電極に用いた新規の微生物燃料電池の処理実験を継続した。その結果,発電はできるものの,能力が不安定であった。その原因として,有機物濃度が影響していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Bio- Mn酸化物の生成機構の解明とオーダーメイドの金属吸着・除去:マンガン酸化細菌は,有機物濃度が低い時にはMn酸化するが,有機物濃度が高い時にはMn還元を行う。この機構を明らかにするため,分離したマンガン酸化能力の高い純菌を用いて,有機物濃度を変えたバッチ実験を行い,遺伝子発現をトランスクリプトーム解析により実施した。しかし,データ解析は不十分であり,継続して解析を行う。 2.難分解性物質の分解特性:微生物によって直接的に染料を分解できなくても,染料がMn酸化物によって分解され,その分解生成物はさらに生物学的に分解除去されることが分かった。しかし,Mn酸化物による分解生成物の中には,染料よりも高分子の物質も生成され,その生成物は生物学的には分解されないことがLC-MS分析より明らかになった。そこで,高分子の生成物が生成されないようなMn酸化物による分解方法を検討する。 3.新たな窒素サイクルを利用した新規窒素処理プロセスの開発:好気条件下においてMnを酸化して硝酸塩を除去するDHSリアクターによる連続処理を実施し,新規の好気Mn酸化脱窒細菌の集積培養に成功している。この新規微生物の分離培養を試みる。また,新規細菌が硝酸塩を窒素ガスまで還元する,すなわち完全脱窒するかどうか,安定同位体窒素を用いて明らかにする。 4.オーダーメイドの金属除去・回収,染料の除去,新規窒素除去,発電の実証と性能評価:上記3で検討したMn酸化物による染料の分解生成物をDHSリアクターによる連続処理実験を実施し,処理性能を調べる。 5.新規微生物燃料電池の開発:一槽型のMn酸化物をアノード電極に用いた新規の微生物燃料電池の処理性能は不安定であった。そこで,不安定の原因について検討する。
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Causes of Carryover |
新規窒素サイクルに関与するMn酸化細菌とMn還元細菌の分離培養を試みたが,成功に至らなかった。そのため新規細菌のゲノム解析ができず,その解析費を使用しなかった。令和5年度は,そのゲノム解析費に使用し,また分離培養ができなかった場合には,メタゲノム解析に変更して,その解析費として使用する。
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