2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞質移植マイクロ流体デバイス開発による高収率・細胞機能改変手法の創製
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20K20551
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小穴 英廣 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20314172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
オケヨ ケネディオモンディ 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 講師 (10634652)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 免疫治療 / 細胞医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、微細加工技術により製作したマイクロ流体デバイス中での、異種細胞同士の1対1電気融合および融合体の再分離によって生じる細胞の形質変化(機能変化)を、細胞非侵襲的に1細胞レベルで経時追跡することを通じ、細胞の形質変化の過程、特に細胞質移植時の受容細胞の細胞周期との関連を明らかにすると共に、作製履歴が明らかな細胞のクローンを得ることにより、機能改変細胞の応用展開を加速する新手法を開発することを目指している。これは、外来遺伝子の混合を伴わない細胞質の移植による細胞機能改変という、ゲノム改変を伴わない(エピジェネティクスの調整だけによる)細胞機能改変技術となっている。 本年度は、これまでに試作してきた「細胞融合-再分離-タイムラプス観察デバイス」を改良し、マイクロ流路中の流れを一方向に保ったままで、全ての工程が行えるデバイスを作製した。そして、この新規デバイス中で、樹状細胞へのがん細胞(HeLa細胞)からの細胞質移植を行い、「その場」でタイムラプス観察を行った。実験の結果、がん細胞から細胞質移植を受けた樹状細胞について、移植後24時間以上生存していることを示唆する結果が得られた。また、外来因子を封入したジャイアントリポソームを作製し、これを細胞と融合させる事で細胞機能改変を行うという手法の可能性についても検討を行い、我々が開発したマイクロ流体デバイス中で、細胞とジャイアントリポソームの1:1融合を行える事を実証した。本研究成果の一部は、分子生物学会(オンライン開催)において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに試作してきた「細胞融合-再分離-タイムラプス観察デバイス」を改良し、マイクロ流路中の流れを一方向に保ったままで、「マイクロ流体デバイスへの細胞導入-1:1異種細胞同士の細胞融合-細胞質混合後の再分離-分離細胞の「その場」タイムラプス観察」という一連の工程が行えるデバイスを作製した。そして、この新規デバイス中で、がん細胞(HeLa細胞)から樹状細胞への細胞質移植を行い、タイムラプス観察を行った。ここで樹状細胞については、細胞周期をG1/G0期に同調した場合と、同調していない場合の細胞を用い、HeLa細胞は、FUCCIにより細胞周期を確認しながら細胞質移植を行った。実験の結果、細胞周期をG1/G0期に同調した樹状細胞の方が、細胞質移植後の生存時間が長い傾向があることが分かった(投稿準備中)。 また、外来因子を封入したジャイアントリポソームを作製し、これを細胞と融合させる事で細胞機能改変を行うという手法の可能性についても検討を行い、我々が開発したマイクロ流体デバイス中で、細胞とジャイアントリポソームの1:1融合を行える事を実証した。本研究成果の一部は、分子生物学会(オンライン開催)において発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに開発したマイクロ流体デバイスを用い、以下の研究項目に取り組みつつ研究を推進していくことを計画している。 1) 細胞質移植時の樹状細胞の細胞周期と移植後の樹状細胞の生育との相関解明:細胞周期をG1期, S期,M期などに同調処理した樹状細胞を用い、細胞質移植後の個々の受容細胞の動態を、タイムラプス観察により追跡する。これにより、どの細胞周期における、どのような形態/状態の細胞を細胞質移植に用いると、その後の生育が良くなるか(収率が上がるか)を明らかにすることに取り組む。またここでは、受容細胞の細胞周期と細胞質移植後の生育との相関に加えて、移植する細胞質の量というパラメータについても着目する事を予定している。 2) 樹状細胞の抗原提示能の、免疫蛍光染色を用いた評価:マイクロ流体デバイス中で生育させている細胞質移植後の樹状細胞に対し、蛍光標識された抗MHC抗体を用いてライブセル免疫蛍光染色を行い、樹状細胞表面に提示されたMHCタンパク質の定量化を行う。また、外来物質(細胞質など)を封入したリポソームの作製および細胞との融合による細胞機能改変についても引き続き技術開発を進めていく。 以上を通じて、ゲノム改変を伴わない(エピジェネティクス[後天的ゲノム修飾]の調整のみによる)高収率な細胞機能改変・高付加価値細胞作製技術を確立することを目指す。
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