2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立間 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90242247)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | プラズモン共鳴 / キラリティー / 化学センサ / 金属ナノ粒子 / 磁性体ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プラズモン共鳴を示すキラルナノ構造を作製し、アミノ酸などのキラル分子について、そのキラリティーを区別してセンシングできるセンサ(エナンチオ選択性センサ)の開発を目的としている。 2022年度はまず、ナノスフィアリソグラフィーという手法により半導体基板上に作製した三角形状の金ナノプレートのアレイに、鉛(II)イオンの存在下で右または左円偏光を照射することによりキラルな幾何学配置を持つ酸化鉛(IV)を析出させた。円偏光をキラル源として作製した初のキラルナノ構造アレイである。 ただし、円偏光をキラル源として作製したこれまでのキラルナノ構造はいずれも、プラズモン共鳴特性を持たない誘電体(酸化鉛)の析出か、プラズモン共鳴特性を持つ材料の円偏光による溶出を使用してきた。そのため、キラルな電場を生じる場が誘電体により覆われていて直接アクセスできないか、あるいは形状的にキラルな電場が弱くなる傾向があった。 そこで、形状異方性を持つ銀ナノ粒子に、銀イオンとクエン酸イオンの存在下で円偏光を照射して熱電子還元することによりキラルな形状へと成長させる新たな手法を開発した。銀ナノ粒子を合成してさらに成長させる2段階過程による方法のほか、銀イオンから1段階過程で作製する方法もある。 また、磁性体ナノ粒子を用いてエナンチオ選択性を得る手法についても検討を行っており、鉄(II)イオンをオキシ水酸化鉄へ酸化し、さらにヘマタイトに変換することで磁性体ナノ粒子を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発を目指しているエナンチオ選択性センサを得るためには、なるべく均質なキラルナノ構造を作製する必要がある。ナノスフィアリソグラフィーという手法を用いることにより、キラルナノ構造のアレイを作ることができるようになり、これまでよりも均質なキラルナノ構造の作製に成功した。 また、センシングを行う上で、キラルな電場が強い領域にキラルな分子がアクセスできることも必要である。これまではその部位が誘電体で被覆されているなどの問題があったが、誘電体を析出させるのではなく、プラズモニック特性を持つ金属を析出させることにより、誘電体で被覆されない状態のキラルナノ構造を作製することに成功した。 さらに、キラルなナノ構造を用いるアプローチだけでなく、2022年度からは磁性体ナノ粒子を用いるアプローチも新たに取り入れつつ研究を進めている。これにより、当初の予定よりもより多角的な取り組みとなっている。これらのことから、十分順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
プラズモニックな金属のみからなるキラルナノ構造やそのアレイについて、従来よりもさらにキラリティーを高めるべく、前駆体粒子の高さを改善するなどの工夫を行う。また、ナノスフィアリソグラフィーだけでなく、集束イオンビーム(FIB)を用いる方法などによるアレイの作製も試みる。こうして作製したキラルナノ構造やそのアレイを用いて、キラル分子のエナンチオ選択的センシングとその評価を行う。 また、磁性体ナノ粒子を用いたアプローチに関しても、キラル分子のエナンチオ選択的センシングとその評価を行う。
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Causes of Carryover |
最終年度に当たる次年度には、センサの作製をより多く行う必要があることから、本年度の分を繰越すことで、これまで雇用してきた者のエフォート率を高めて雇用する。また、それに伴い測定装置の購入も行う予定である。
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