2020 Fiscal Year Research-status Report
ナノポーラス錯体によるダイナミック熱スイッチ材料の創製
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20K20564
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 亮太郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00402959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下 心平 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80749995)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱を特定の方向に流すことが可能な「熱スイッチ材料」は、熱制御において中核的な役割を果たすものである。しかし、熱伝導を能動的かつ任意に制御可能な材料はほとんど研究がない。本研究では、ナノ空間物質へのガス吸脱着現象を利用した全く新しい熱制御材料の開発に挑戦する。本研究では多孔性物質の一種である多孔性金属錯体(MOF)を熱制御材料として用いる。これまでのMOF研究のほとんどは、ガス吸着やガス分離に主眼がおかれている。その一方で、細孔への分子吸脱着によりMOF細孔内の密度が大きく変化するので、「吸着状態のMOF結晶」と、「脱着状態のMOF結晶」の熱物性は大きく異なっていると予想されるが、そのことに着目した研究はほとんど見当たらない。本研究課題ではMOFの「吸着・脱着機能」と「熱スイッチ機能」を統合することで、まったく新しい「ダイナミック熱スイッチ機能」を有する物質を創製し、外の環境温度や圧力の操作で、物質を変えることなく、熱良導体から熱不良導体へとスイッチ可能な全く新しい熱制御システムの開拓を行うことを目的としている。これをふまえ、当該年度は下記の実験を実施した。 (1).熱スイッチ機能を志向した、MOF結晶の合成。 (2).水および二酸化炭素を用いて、水および二酸化炭素を用いた、熱伝導度測定に影響すると想定される吸着熱の直接観察。 (3).熱伝導度測定装置の立ち上げ その結果、(1)に関しては6種類の剛直および柔軟な構造特性を有するMOFの合成に成功した。また、(2)に関しては吸着熱の観察システムの高度化を達成し、精密に吸着熱を測定することが可能にした。これを用いて、吸着熱測定を(1)で合成したMOFに対して実施し、それぞれの吸着熱の挙動を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を実現するために必須の下記A、B、Cの課題を設定し、計画的に取り組んでいる。 課題A:MOFへの気体分子の吸脱着を基盤とした熱スイッチ材料の開発 課題B:高速熱伝導材料を志向した高速分子拡散が可能なMOFの開発 課題C:超高速熱拡散率を有するMOFの構築 当該年度は課題Aを中心に研究を実施した。その結果予定より多くのMOF結晶の合成に成功し、また吸着の際の熱の直接観察にも成功した。本成果は現在論文としてまとめており、本年度中に投稿できる段階にある。また、当初課題Bは2年度以降に実施することを考えていたが、計画を前倒しして、吸着熱測定とともに吸着速度測定を実施することができ、従来の物質よりも吸着速度が高速であるものを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、本研究課題を実現するために必須の下記A、B、Cの課題を設定し、計画的に取り組んでいる。 課題A:MOFへの気体分子の吸脱着を基盤とした熱スイッチ材料の開発 課題B:高速熱伝導材料を志向した高速分子拡散が可能なMOFの開発 課題C:超高速熱拡散率を有するMOFの構築 今年度は課題Bを中心に推進し、昨年度に合成を実施したMOFの熱伝導に関する基本的知見を得るとともに、吸着下での熱物性と分子拡散特性についての検討を行っていく。
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Research Products
(8 results)