2020 Fiscal Year Research-status Report
Dissection of the molecular basis of membrane vesicle biogenesis and construction of an extracellular platform for substance production by using a hyper-vesiculating bacterium
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20K20570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞外膜小胞 / タンパク質輸送 / タンパク質分泌 / 表層多糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
【膜小胞形成を担う分子基盤の解明】膜小胞高生産性細菌Shewanella vesiculosa HM13の膜小胞生産に関与する因子を探索した。トランスポゾンのランダムゲノム挿入によって作製した変異株ライブラリーについて、膜小胞生産性を指標としたスクリーニングを行った。膜小胞生産性は、培養上清中の膜小胞のリポオリゴ糖を免疫化学的手法で定量することによって評価した。その結果、メチル基受容走化性タンパク質ホモログ遺伝子にトランスポゾンが挿入された変異株で膜小胞生産性の低下が見られ、本タンパク質の膜小胞生産への関与が示唆された。 【膜小胞へのタンパク質積み込み機構の解析】HM13株の膜小胞には49 kDaのタンパク質(P49)が主要な積荷として含まれる。P49遺伝子上流には、細胞表層多糖の生合成初発反応を触媒するWecAのホモログ(WecA3)の遺伝子が見いだされ、その欠損株ではP49の膜小胞への積み込みが見られなくなった。また、精製P49をin vitroでP49欠損膜小胞とインキュベートするとP49が膜小胞に積み込まれたが、WecA3欠損株由来の膜小胞にはP49は積み込まれなかった。一方、HM13の膜小胞画分には多糖が見いだされたが、WecA3欠損により、膜小胞画分の多糖は消失した。さらに膜小胞の電子顕微鏡観察では、P49が積み込まれた膜小胞の周辺には直径10 nm程度の微粒子が見いだされたが、WecA3欠損株由来の、P49をもたない膜小胞では、そのような微粒子は観察されなかった。WecA3のパラログであるWecA1やWecA2の欠損は、P49の膜小胞への積み込みや、膜小胞画分の多糖含量に顕著な影響を及ぼさなかった。以上の結果から、P49はWecA3の関与で生合成される膜小胞表層多糖との相互作用を介して、膜小胞に積み込まれると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスポゾン変異株ライブラリーのスクリーニングによって膜小胞形成への関与が示唆されるタンパク質を見いだしたほか、タンパク質の膜小胞積み込みにおいて膜小胞表層多糖が主要な役割を担っていることを明らかにするとともに、当該多糖の生合成を担う遺伝子を同定するなど、大きな進展があった。一方、トランスポゾン変異株ライブラリーのスクリーニングは未完了で、積荷タンパク質と相互作用する多糖の構造決定にも至っていないことなどから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスポゾン変異株ライブラリーのスクリーニングを進める。細菌細胞の共存下でも膜小胞を高選択的に定量できる曲率認識ペプチドの開発に成功しているので、これを用いたハイスループットスクリーニングを実施し、スクリーニングの完了を目指す。膜小胞形成に関与するさまざまな因子の発見が期待される。一方、積荷タンパク質と相互作用する多糖の構造を決定する。積荷タンパク質と相互作用しない変異型多糖を生産する変異株が得られているので、当該変異株由来の多糖の構造決定も行うことにより、相互作用を担う多糖の部分構造を明らかにする。また、積荷タンパク質との融合によって外来タンパク質を膜小胞に積み込む手法を開発する。
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Causes of Carryover |
当初、トランスポゾン変異株ライブラリーのスクリーニングは、培養上清中の膜小胞のリポオリゴ糖を定量する手法で進めていたが、操作が煩雑で、予想以上の時間を要することが判明したため、より簡便で信頼性の高い手法として、曲率認識ペプチドを用いたスクリーニングに切り替えることにした。ペプチドの開発に時間を要したため、これを用いたスクリーニングを次年度に行うこととし、次年度使用額が生じた。また、タンパク質の膜小胞積み込みに関与する糖鎖構造を調べる実験では、当初想定していたリポ多糖ではなく、多糖が積荷タンパク質との相互作用に関与することが研究の過程で明らかになったため、その構造決定や構造に基づく実験を今年度中に完了することが困難な状況となった。未使用分は、当初計画した実験を進めるための遺伝子工学用試薬、変異株スクリーニング用試薬、タンパク質局在性解析用試薬、培養用試薬、プラスチック器具などの消耗品購入に使用する計画である。
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