2022 Fiscal Year Research-status Report
Dissection of the molecular basis of membrane vesicle biogenesis and construction of an extracellular platform for substance production by using a hyper-vesiculating bacterium
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20K20570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞外膜小胞 / タンパク質輸送 / タンパク質分泌 / 表層多糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
【細胞外膜小胞形成を担う分子基盤の解明】 前年度に引き続き、細胞外膜小胞高生産性細菌 Shewanella vesiculosa HM13 の膜小胞生産に関与する因子を、トランスポゾンランダム変異導入によって探索した。10,100 株のトランスポゾン変異株の膜小胞生産性を、曲率認識ペプチドを用いたハイスループットな手法によって評価し、生産性が顕著に変化した変異株についてトランスポゾン挿入箇所を解析した。その結果、18 種の高生産変異株と 8 種の低生産変異株について、トランスポゾン挿入箇所を同定することに成功した。同定した一部の遺伝子について、相同組換えによる破壊株と相補株を作製し、ナノ粒子軌跡解析で膜小胞生産量を定量した。その結果、LapG プロテアーゼなどの欠失が膜小胞生産性を高めることや、D-ヘキソース-6-リン酸エピメラーゼなどの欠失が膜小胞生産性を低下させることが見出された。 【膜小胞へのタンパク質積み込み機構の解析】 S. vesiculosa HM13 の膜小胞の主要積荷タンパク質 P49 は、膜小胞表層多糖と結合することが示唆されている。P49 遺伝子近傍には表層糖鎖合成の初発反応を触媒する WecA の N 末端領域と C 末端領域のホモログをコードする wecA3N と wecA3C が存在する。本菌は、これらの他に WecA ホモログをコードする wecA1 と wecA2 も有する。これらがコードする三種の WecA ホモログの単独欠損株や二重欠損株では表層多糖生合成や P49 の膜小胞への積み込みが認められたのに対し、これらをすべて欠損させた三重欠損株では、膜小胞から表層多糖と P49 が消失した。以上の結果から、三種の WecA ホモログには機能重複があり、これらに依存して生合成される膜小胞表層多糖が P49 との結合性を有すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜小胞形成関連遺伝子群の網羅的解析においては、ハイスループットなスクリーニング法を採用することで、膜小胞生産性の増減を引き起こす原因遺伝子を多数同定することに成功した。また、膜小胞の主要積荷タンパク質が結合する膜小胞表層多糖の生合成機構の解析においても大きな進捗があった。一方、膜小胞への外来タンパク質の積み込み系構築は難航していることから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究に引き続き、膜小胞生産性が著しく増減した変異株について、その原因遺伝子を同定する。それぞれがコードするタンパク質の推定機能に基づいて膜小胞形成にどのように関与しているのか解析する。膜小胞の主要積荷タンパク質 P49 については、立体構造解析や多糖との相互作用解析を進め、膜小胞表層多糖との結合に関与する部位を明らかにする。これらの情報に基づき、外来タンパク質の膜小胞への積み込みにおいてキャリアとして利用可能なドメインを明らかにし、これを利用した外来タンパク質の膜小胞への積み込み系を構築する。
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Causes of Carryover |
トランスポゾン変異株のスクリーニングによって、膜小胞生産性が顕著に増減した変異株を多数取得することに成功したが、これらの一部については、トランスポゾン挿入とは無関係な突然変異によって膜小胞の生産性が変化したことが明らかとなった。このため、一部の変異株については全ゲノム解析によって点変異を同定し、膜小胞生産に影響した原因遺伝子を同定する必要が生じた。また、外来タンパク質の膜小胞への輸送については、キャリアタンパク質の膜小胞移行性が外来タンパク質の融合によって予想以上に影響を受けやすいことが判明し、キャリアタンパク質の立体構造解析などが必要となった。これらの要因により、当初計画していた実験を今年度中に完了することが困難な状況となった。未使用分は、これらの実験を進めるためのゲノム解析外注や、遺伝子工学用試薬、タンパク質機能解析用試薬、タンパク質結晶構造解析用試薬、培養用試薬、プラスチック器具などの消耗品購入、論文投稿などに使用する計画である。
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