2023 Fiscal Year Research-status Report
Dissection of the molecular basis of membrane vesicle biogenesis and construction of an extracellular platform for substance production by using a hyper-vesiculating bacterium
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20K20570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞外膜小胞 / 表層多糖 / タンパク質輸送 / タンパク質分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜小胞分泌高生産性のグラム陰性細菌Shewanella vesiculosa HM13を主な対象として膜小胞生産機構を解析した。本菌のトランスポゾンランダム変異株ライブラリーのスクリーニングにより、膜小胞生産への関与が示唆される22種の遺伝子が同定されている。これらの遺伝子の欠損株と親株の膜小胞をSYTO9による核酸染色とフローサイトメトリーで解析した結果、核酸含量が高い群と低い群に二分されることが見いだされた。細胞質成分である核酸の含量が高い膜小胞は、細胞の溶菌によって形成される膜小胞や、内膜と外膜の両方の出芽で形成される膜小胞と考えられる。一方、核酸含量の低い膜小胞は、外膜の出芽で形成される外膜小胞と考えられる。親株ではこの二群が同程度の割合で存在した。ホスホエノールピルビン酸合成酵素やセンサーヒスチジンキナーゼ/レスポンスレギュレーターのホモログを欠損した株では特に核酸含量が低い膜小胞の生産性が低下した。したがって、これらの遺伝子は特に細胞質成分を含まない外膜小胞の生産に重要と考えられた。 一方、本菌の表層多糖の膜小胞生産への関与を調べた。本菌は表層多糖生合成の初発反応を触媒するundecaprenyl-phosphate α-N-acetylglucosaminyl 1-phosphate transferase (WecA) のホモログを三つ有するが、これらの単独欠損株や二重欠損株では膜小胞生産性が親株の20%程度に減少し、三重欠損株では7%程度に減少することが見いだされた。以上の結果から、本菌の膜小胞生産において表層多糖が重要な役割を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究により、膜小胞の生産に関与する種々の因子の同定に成功したほか、膜小胞の多様性創出のメカニズム解明に寄与する成果が得られるなど大きな進展があった。一方、出芽や膜の湾曲、膜小胞の膜からの離脱を直接駆動することが想定される因子の同定には至っていないことから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの変異株ライブラリーのスクリーニングによって見いだされた膜小胞生産への関与が示唆される遺伝子について個々の機能解析を進める。具体的には遺伝子破壊株・高発現株の細胞や膜小胞の形態学的解析、オミックス解析、相互作用因子の探索を行うほか、配列から推定される機能に基づく作業仮説を検証する実験を行う。また、膜小胞生産への関与が示された細胞表層多糖について、これと協調して膜小胞生産に関わる因子を明らかにするため、多糖と相互作用するタンパク質成分の探索を行う。一方、トランスポゾンランダム変異株ライブラリーからの取得が困難な必須遺伝子の変異株の取得を目指して、突然変異株ライブラリーの構築と新たなスクリーニング法の開発にも取り組む。
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Causes of Carryover |
トランスポゾンランダム変異株ライブラリーのスクリーニングでは取得しにくい必須遺伝子の変異株を取得すべく、変異導入の方法やスクリーニングの方法を見直すこととしたため次年度使用額が生じた。また、膜小胞形成を担う因子として当初想定していなかった多糖が見いだされたため、多糖と相互作用する因子の探索などを実施する必要が生じたため次年度使用額が生じた。未使用分は、突然変異株ライブラリーの構築とスクリーニングに必要な培養用試薬・遺伝子工学用試薬・各種分析用試薬、多糖との相互作用因子の探索に必要なタンパク質精製用カラム担体などの生化学実験用試薬の購入に使用する計画である。
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