2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Possibility of Infants' Nutritional Improvement through Market in Urban Areas of Sub-Saharan Africa
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20K20575
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 武司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40343769)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 栄養改善 / 乳児 / 栄養補助食品 / 貧血 / 市場 / 都市部 / サブサハラ・アフリカ / ガーナ |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児向け栄養補助食品(KOKO Plus)に対する母親の支払い意思額が、同製品の無償配布の経験によりどのような影響を受けるかという課題について、Becker-DeGroot-Marschak(BDM)法による実験オークションの結果の分析を精緻化し、論文として取りまとめた。主たる結果は次の通り。異常値を除いて分析対象となった337名の母親のうち、およそ半数は無償配布実験の前にすでに同製品の使用経験があった。使用経験の有無で2つの群に分けて、別々に分析したところ、無償配布の効果は使用経験のない群でのみ有意であった。具体的には、1ヶ月の無償配布は対照群と比べて約1セディ(49%)高い支払い意思額を示し、無償配布が3ヶ月になる逆に約0.6セディ(28%)低い支払い意思額を示した。中間の2ヶ月では対照群と有意差はなかった。なお、同製品の市場での販売価格は5セディである。さらに、実験オークションで得られた支払い意思額の傾向は、実際に観察された同製品の購買行動からも確認できた。以上のことは、短期間の無償配布は使用経験に基づく学習効果を生むが、それが長期に及ぶと無償であることがアンカーとなり支払い意思額を低下させたと考えられる。本研究の課題である「市場を通じた栄養改善」に対して、重要な示唆を与える結果である。
2020年度にクマシ近郊のBosomtwe地区で230名の母子を対象に行った子どもの貧血の状態を母親に知らせる実験は次のように成果を取りまとめた。子どもの貧血情報を提供するだけでは子どもの貧血状態に有意な変化は見られないが、同時期に実施したSocial Behavioral Change Communication (SBCC) プログラムを受講した看護師のいる保健所で貧血情報の提供を実施した場合には、子どもの貧血状態が有意に改善した。
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