2022 Fiscal Year Research-status Report
極限環境耐性動物クマムシの持つ耐性メカニズムのダイナミズムと新規分子原理の解明
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20K20580
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國枝 武和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10463879)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 乾燥耐性 / ゲル相転移 / クマムシ / ストレス / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、これまでに同定してきた脱水ストレスに応答して可逆的に特有の構造体を形成するクマムシタンパク質群 T-DRYPs について解析することで、新たな耐性原理の検証と提唱を目指している。本年度は、まずこれまでに主にヒト培養細胞を用いて明らかにしていたストレスに応答して線維化するクマムシ固有の耐性タンパク質CAHS3について、クマムシ個体における挙動の解析を行った。まず、免疫組織化学を用いた超解像イメージングによりクマムシ成体において内在性CAHS3タンパク質は主に表皮細胞と体腔細胞に発現していることを明らかにした。さらに乾燥前後における細胞内の挙動を解析した結果、乾燥依存に細胞骨格様の密な繊維状ネットワークを形成することを見出した。さらに、同タンパク質のクマムシ個体における存在量がin vitroでゲル転移を引き起こすに足る濃度とほぼ同等であることを明らかにした。これらの結果はこれまでヒト培養細胞など異種細胞発現系で明らかにしてきたように、クマムシ細胞においても内在性CAHSタンパク質が乾燥依存に線維化しゲル転移を誘起することを示唆している。また、繊維化を可能にする構造基盤を明らかにするために、線維化能の異なるCAHSパラログ間のスワップ解析から繊維化能を規定する領域を絞り込んだ後、変異導入解析によって乾燥時に形成されるヘリックス構造における電荷アミノ酸の連続した局在が繊維化に決定的であり、静電相互作用が重要な形成基盤の1つであることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
線維化能の異なるCAHSパラログ間の比較・変異導入解析から当初予定していた線維化能を規定する構造基盤の解明を達成することができた。加えて、クマムシ個体におけるCAHS3タンパク質の挙動を解明し、これまで解明してきた脱水ストレスに依存した繊維ネットワーク形成がクマムシ細胞に起きていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
CAHS を含む T-DRYPs について、それらの間・あるいは他の生体分子との相互作用の解析
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Causes of Carryover |
実験補助者の雇用を予定していたが人材の確保ができず、その分の作業を研究代表者や学生等で分担して遂行したため。 その負担分として次年度はストレス応答性タンパク質の相互作用について発展的な解析を実施する。
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Research Products
(17 results)