2023 Fiscal Year Annual Research Report
クシクラゲ櫛板の分子構造の解明と運動性フォトニック結晶開発に向けた基盤研究
Project/Area Number |
20K20583
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80221779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大岩 和弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所, 主管研究員 (10211096)
岩本 裕之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 客員研究員 (60176568)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 繊毛 / ダイニン / 微小管 / 軸糸 / X線繊維回折 / クシクラゲ |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の繊毛は、微小管と分子モーターが複雑に配置された超分子機械である。最近のクライオ電子線トモグラフィーを用いた研究により、各タンパク質複合体の分子配置が次第に明らかになってきた。しかし、実際に波打ち運動を行う際の「生」の状態の分子間リレーは明らかになっていない。そこで本研究では、繊毛が数万本も束になっている天然の結晶ともいえるクシクラゲの櫛板を材料とし、(1)櫛板内で繊毛をつなぎとめている隔小板の構成成分の同定、(2)クシクラゲ櫛板のX線繊維回折、(3)櫛板の試験管内形成を行い、繊毛運動に伴うタンパク質複合体の構造変化を明らかにすることを目的とした。さらに、試験管内での櫛板形成の原理を探り、運動するフォトニック結晶の作製を目指した。最終年度では、新たに3種類の隔小板成分を同定し、櫛板の構築と運動が二段構造をとっていることを確証する結果となった。また、X線繊維回折では、キャピラリー内に充填した櫛板を回転することができるステージを設置し、様々な角度からX線を照射した場合の回折パターンを取得した。赤道反射のパターンから角度を推定したデータを加算することにより、分解能が低いながらも3D再構成を世界で初めて成功させた。さらに、運動している櫛板にX線を照射した場合の回折パターンをリアルタイムで動画撮影し、それと同期した櫛板の屈曲運動もハイスピードカメラで記録した。その結果、繊毛周期に伴う回折パターンの変化が特定の層線で観察された。これは、繊毛内の軸糸構造の変化を生で観察したことを示す。一方で、赤道反射のデータを用い、屈曲角や位相と関連づける試みも行ったが、これについては完成に至っていない。また、試験管内の櫛板形成については、同定した隔小板タンパク質を単離繊毛軸糸に加えるなど種々の条件を試行錯誤したが、現在まだ成功に至っていない。
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Research Products
(9 results)