2020 Fiscal Year Research-status Report
Sex difference and evolution of the brain illuminated by Connect-Seq: A novel single-cell level neural circuit mapping tool with cell type annotation
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20K20589
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮道 和成 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (30612577)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | コネクトーム / トランスシナプス標識 / scRNAseq |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系は膨大な種類のニューロンが自らの個性を踏まえて互いに連結した複雑な神経回路から構成されている。その構成原理を理解するためには、ニューロンの個性と接続頻度とを紐づけた定量的情報が必要となる。従来の研究ではニューロンの分類と神経接続パターンの解析とは別個の研究として進められており、両者を統合するような方法論が確立されていなかった。本研究テーマでは、この壁を打破するべく、狂犬病ウイルスベクターを用いたトランスシナプス標識法に一細胞トランスクリプトミクスをシームレスに連結する新規技術群を開発する。 初年度となる2020年度には、狂犬病ウイルストランスシナプス標識法を複数の脳領域の特定のタイプのニューロンを起点として動かし、多くのシナプス前細胞群を同定した。これは、将来的に新規技術を適用するべき脳領域や生命現象の決定に重要だった。次に、成獣脳組織から神経細胞の単離方法の検討を進めた。特に、バイオセイフティ上の理由から狂犬病ウイルス標識サンプルは固定後にFACSに供することが望ましいため、固定剤の種類や条件に関して検討を進めた。 さらに狂犬病ウイルスベクターに10bpのランダムな配列からなる分子バーコードを付与することに成功し、少なくとも数万種類のユニークなバーコードを持つウイルスベクターの構築に成功した。また分子バーコードの多様性を維持したまま生体実験に利用可能なレベルまでウイルス粒子を増幅する手法についていくつかの予備的な検討を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で動物実験や共同研究の実施が難しい時期が続いたが、主に培養細胞を用いて行うことのできる部分で進捗を得た。固定化剤の選定や固定がRNAのクオリティに与える影響を評価したのに加え、狂犬病ウイルスベクターにユニークな分子バーコードを付与する系の構築がおおむね完了した。この過程で、プラスミドから狂犬病ウイルスベクターを再構成する過程で分子バーコードの多様性にどのような影響があるかについて理解を深めた。また、狂犬病ウイルスベクターの調整方法が分子バーコードの多様性やトランスシナプス標識の効率に与える影響を明らかにした。 ウイルス粒子の技術的な検討に加え、視床下部室傍核のオキシトシンニューロンやキスペプチンニューロンの関わる生命現象について多くの基礎的な知見を集め、将来的に開発する新規技術を適用するべき生命現象を抽出することにも成功している。これらのことから、おおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ成獣個体の脳から生細胞を単離し一細胞RNAシークエンス (scRNAseq) に供するのは技術的に決して簡単なことではない。そこで2021年度は狂犬病ウイルス標識サンプルの取り扱いの難しさを考慮し、まず、バイオセイフティP1レベルで扱える系で神経細胞のscRNAseqの経験を積む。具体的には、視床下部弓状核に存在し性成熟や性周期に重要な役割を果たすキスペプチンニューロンや室傍核に存在し性行動や母子の愛着、出産や授乳に重要な役割を果たすオキシトシンニューロンについて、特異的に標識した個体からscRNAseqを確立し、性成熟や妊娠・出産に伴うトランスクリプトームの変動を明らかにする。 狂犬病ウイルスツールについては、上記の技術的習熟を考慮しつつ、FACSによる回収効率の低さを打破するため、顕微鏡下、非固定の状態で手動にて単離細胞を回収する系の構築を進める。まずはバーコードのついていないウイルス標識サンプルの解析を確立し、ウイルスの感染がトランスクリプトームに与える影響の評価や、オキシトシンニューロンのシナプス前細胞の細胞種の決定など、本手法の新規性と強みを活かせるアプリケーションを開拓する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により勤務人数や共同研究先との自由な往来が制限されていた時期が長かったため、研究室内で実施可能な予備実験や条件検討を多めに実施し、コストのかかるシークエンスをやや抑えた運用となった。このため、約38万円の次年度使用額が発生した。2021年度には当初予定の通り、多くのscRNAseqを実施できる見込みなので繰越額を含めて請求額を必要とする見込みである。
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Research Products
(7 results)