2022 Fiscal Year Research-status Report
身体運動とうま味で奏でるスポーツと健康の価値の創造
Project/Area Number |
20K20623
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 英幸 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 主任研究員 (00292540)
冨賀 裕貴 佐賀大学, 医学部, 助教 (50826394)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
川中 健太郎 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (80339960)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
|
Keywords | 筋サテライト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、骨格筋の培養実験に広く用いられているC2C12細胞の分化実験で、イノシン酸を細胞培養液中に添加すると顕著な細胞増殖を認めるとともに細胞内グリコーゲン量が増加することを発見した。グリコーゲンは、肝臓、骨格筋、腎臓、脳組織に貯蔵されている糖であり、エネルギー物質である。身体活動・運動+食事による筋グリコーゲン量の増加は持久的パフォーマンスを向上させることも知られている。そこで、我々は、「イノシン酸(IMP)摂取は、身体のエネルギー・チャージを促進する、さらに身体活動・運動との組み合わせは、相加的あるいは相乗的な効果をもたらす」、という作業仮説を立てた。 本年度は、マウス骨格筋から抽出したサテライト細胞をin vitroの培養系で分化誘導し、イノシン酸添加の有無による分化促進およびその背景にある遺伝子発現について検討した。その結果、イノシン酸投与により、明視野での顕著な分化促進作用は観察されなかった。また、DAPIおよびPax7染色画像においてもイノシン酸投与の有無により顕著な差を認めなかったが、細胞の分化マーカーである Myogeninの発現を増加させた。さらに細胞内の脂質酸化に関わる遺伝子Aおよび遺伝子Bの発現が低下するという興味深い結果を得た。筋菅への分化時にはエネルギー供給機構として酸化系から解糖系への移行が起こることが報告されており、本研究の結果はイノシン酸が筋芽細胞のエネルギー代謝の変化と分化促進に関与している可能性を示唆している。 以上より、細胞の分化過程によるイノシン酸投与は、分化促進を惹き起こす可能性があることが明らかとなった。今後、添加のタイミングや容量依存的な作用が観察されるか、実施する予定である。なお、昨年度から引き続き実施していたマウス骨格筋を用いたin vitroインキュベーション実験のデータをまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に計画していたマウス骨格筋を用いたin vitroインキュベーション実験のデータをまとめることができた。ただし、COVID19の影響により、ヒトを対象とした実験には着手が困難であった。今後、動物モデルや筋サテライト細胞の実験データをもとに、引き続き、実験計画を修正しながら進めていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度では、培養4日目以降に分化誘導を開始し、イノシン酸の添加有無で細胞増殖の変化などを検討した。また、in vitroでの筋インキュベーション実験を用いてグルコースの取り込み促進について、インスリンやAICAR刺激との相互作用についての検討がほぼ、完了した。筋サテライト細胞の分化実験過程で、筋グリコーゲン促進作用以外の知見が得られたため、新たな視点で追加の実験計画を組み、進めていく予定である。 なお、COVID19の影響などを鑑み、実施への判断が厳しい状況であったが、今後の状況を見ながら、実施可能な計画について共同研究者とディスカッションを進めていく。
|
Causes of Carryover |
米国サンディエゴで開催されたアメリカスポーツ医学会に参加する予定でいたが、COVID19の影響により現地参加を見送り、オンラインでの参加に変更したため、海外出張旅費の支出が減額になったこと、実験環境の整備によりCOVID19感染拡大防止対策を徹底するために実験室使用計画の調整を図ったことで、薬品や分析に必要な試薬などの消耗品の支出が減額となったこと、動物実験の進捗によりリサーチアシスタントなどの人件費支出が減額となったことより次年度額が生じた。 令和5年度は、国際学会発表および国内学術学会発表に係る旅費、学術論文投稿に係る経費、新たに計画する実験に係る消耗品、研究支援者の雇用などに充当する予定である。
|
Research Products
(1 results)