2022 Fiscal Year Annual Research Report
脳細胞ネットワークにおける乳酸代謝動学-脳の高次機能や神経疾患の解明を目指して-
Project/Area Number |
20K20631
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
雨宮 隆 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60344149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 和幸 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (40462171)
山口 智彦 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任教授 (70358232)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | アストロサイト / ニューロン / 乳酸輸送 / 解糖系振動 / 代謝振動 / 因果性 / 細胞共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス胚性腫瘍由来細胞(P16C6)を用いてニューロン/アストロサイト共培養系を確立した。最初に,アストロサイトにおける解糖系振動を観察することを目的としてこの培養系にグルコース飢餓を施しAMPK(アデノシンモノリン酸活性化タンパク酵素)を発現させ解糖系を亢進させた。その後,グルコースを添加し解糖系振動が誘発されるか観察を行った。その結果,グルコースの取り込みによると思われるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の蛍光強度の一過的な上昇は観察されたが,引き続き起こると予想している振動現象は見られなかった。 なお,アストロサイトとニューロンのグルコース取り込み量を蛍光強度の上昇値を指標として評価したところ,アストロサイトはニューロンよりも有意にグルコースを多く取り込んでいた。このことは,アストロサイトでグルコースが代謝されて乳酸となり,ニューロンが細胞外に放出されたこの乳酸を取り込み代謝するという脳細胞のANLS(Astrocyte-Neuron Lactate Shuttle)仮説を示唆するものである。 細胞間の共生的エネルギー代謝を数理的に解明するために,これまで構成してきた解糖系を対象とした数理モデルをミトコンドリア代謝も含むものに拡張した。このモデルは,ある細胞の解糖系で産生された乳酸が細胞外に放出されその乳酸を別の細胞が受け取りミトコンドリアで代謝するという,細胞間エネルギー代謝の因果的相互作用の解析に利用することができる。 数理モデルの数値計算を行ったところ,従来通りの細胞質内のNADH振動に加え,ミトコンドリア内のNADHやATPの振動も見られることがわかった。これにより,乳酸を介する細胞間のエネルギー共生の因果性を解析するための数理モデル的基盤が構築された。
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Research Products
(13 results)