2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of Hypobulia and Possibility of Neurotherapeutic Approach in the Very Elderly
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20K20671
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤山 文乃 北海道大学, 医学研究院, 教授 (20244022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 康治 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (30648431)
苅部 冬紀 北海道大学, 医学研究院, 助教 (60312279)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ドーパミン / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
厚生労働省研究班の報告書によると、フレイルとは「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態」とされる。つまり、脳血管障害や骨折など、明確かつ急性な疾病がないにもかかわらず、はつらつとした日常生活が送れない状態を指す。この原因が仮に、「単なる意欲の低下」だとすれば、意欲、つまり報酬予測誤差をコードしているドーパミン (Schultz et al., 1987) を補充、もしくはドーパミン受容体の刺激剤を投与するというアプローチが考えられる。しかし、加齢によって、神経回路自体が組み替えられている可能性、もしくは、加齢とともにドーパミンなどの神経伝達物質の量が徐々に減少することによって神経回路が補填的に組み替えられている可能性については、ほとんど研究されていない。高齢者の問題を考える上では、まず「高齢者の脳がどのような神経路になっているのか」を知ることが大前提で、それを認識したうえで、治療アプローチを考えるべきではないだろうか。本研究は、ドーパミン量をモニターしながら、加齢に伴う神経路の変容を解剖学的および機能的に解析し、高齢者の神経路の実態に迫る、世界で初めての挑戦的な研究である。本研究では、加齢による神経路の解剖学的および電気生理学的変容を解明するために、若年および老齢の動物(基本はげっ歯類、解剖学的所見は一部マーモセット)を用い、シナプスから行動レベルまで体系的な解析を行う。ドーパミン量の測定に関しては、細胞外液の量はボルタンメトリーで測定し、神経細胞に影響する量はAAV9-hSyn-dLight1.2 (addgene) による光イメージング (Robinson et al., eLife, 2019) によって測定する。研究分担者の平井助教は、光定量法に精通している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、同志社大学から北海道大学への研究代表者および研究協力者の異動、COVID-19感染拡大防止子のための実験規制による実験動物の搬入制限などのため、研究環境を整え、得難い加齢動物の入手経路を作ることに多くの時間を費やした。しかしようやく研究環境が整ったため、次年度は(A) 神経軸索標識により、加齢により変化した神経投射を検出する (B) この神経投射が解剖学的にシナプスする相手のニューロンを、共焦点顕微鏡解析で明らかにする (C) 光学的に確認されたシナプス部位における受容体の変化を共焦点もしくは電子顕微鏡解析で確認する (D) 解剖学的に同定したシナプス結合を、スライス標本を用いたパッチクランプ細胞記録で電気生理学的に確認する。このように、本研究を通じて、シナプスからマクロレベルまで、加齢による神経路の変遷を詳細に解明する予定である。また、老齢動物の入手に関しては、令和3年度東北大学加齢医学研究所共同利用・共同研究に申請しており、より安定して老齢動物を入手できるよう努力していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の具体的な神経路の解析としては、(A) 遺伝子改変トレーサーを用いた単一神経軸索標識により、加齢により変化した神経投射を検出する。(B) この神経投射が解剖学的にシナプスする相手の神経細胞を、4重染色による共焦点顕微鏡解析で明らかにする。(C) 光学的に確認されたシナプス部位における受容体の変化を、Post-embedding法による電子顕微鏡解析で確認する。(D) 解剖学的に同定したシナプス結合を、スライス標本を用いたパッチクランプ細胞記録で電気生理学的に確認する。さらに、(E) このシナプス結合の生体内における影響を調べるために、無麻酔・自由行動中の動物にリアルタイム計測マルチニューロン記録を行う。つまり、本研究を通じて、シナプスから行動レベルまで、加齢による神経路の変遷を詳細に解明する。研究代表者の研究室に在籍する2名の研究分担者(苅部准教授、平井助教)と大学院生(角野)は、シナプス結合の電気生理学的解析を行う。特設審査領域「超高齢社会研究」の目的の一つは、米国での "Choosing Wisely" キャンペーンに見て取れるように、根拠が乏しいままの高齢者への医療行為に対する解決策を検討することであろう。また、「生命寿命」のみならず「健康寿命」を伸ばし、well-beingを実現するためには、高齢者特有の「意欲の低下、行動学習の困難」の神経基盤を解明することが必要である。本研究は、“加齢とともに変化する「意欲と行動学習を担う」神経路”を解明し、正確かつ現実的な治療方針につなげるという、本領域に合致する研究である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、COVID-19の影響で、全ての学会および研究会、研究打ち合わせができず、旅費を使用することがなかった。また、本年度は、同志社大学から北海道大学への研究代表者および研究協力者の異動、COVID-19感染拡大防止のための実験規制による実験動物の搬入制限などのため、研究環境を整え、得難い加齢動物の入手経路を作ることに多くの時間を費やした。しかしようやく研究環境が整ったため、次年度は(A) 神経軸索標識により、加齢により変化した神経投射を検出する (B) この神経投射が解剖学的にシナプスする相手のニューロンを、共焦点顕微鏡解析で明らかにする (C) 光学的に確認されたシナプス部位における受容体の変化を共焦点もしくは電子顕微鏡解析で確認する (D) 解剖学的に同定したシナプス結合を、スライス標本を用いたパッチクランプ細胞記録で電気生理学的に確認する。このように、本研究を通じて、シナプスからマクロレベルまで、加齢による神経路の変遷を詳細に解明する予定である。また、老齢動物の入手に関しては、令和3年度東北大学加齢医学研究所共同利用・共同研究に申請しており、より安定して老齢動物を入手できるよう努力していく。
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Research Products
(10 results)