2023 Fiscal Year Annual Research Report
中世以降の漆黒と平蒔絵材料を識別する自然科学的手法の確立
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20K20679
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
神谷 嘉美 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90445841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 由莉奈 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (00636912)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 平蒔絵 / 漆黒 / 黒色膜 / 金属粉 / 鉄イオン / XAFS |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度~2022年度にかけて実施していた、中世の黒色塗膜の再現実験について漆サミット2023で発表し、これまでの研究成果を発信した。鉄分添加による可視光を吸収する黒色塗膜に対して、従来の分析方法では低濃度の鉄イオンを安定的に検出することが困難なため、黒色を発色するメカニズムや塗膜の内部構造は解明しきれていなかった。X線と中性子の特色を利用し、その透過率の差で漆の構造を観る手法を確立した結果、黒漆塗膜が黒色になる科学的なメカニズムを初めて解明した(国際学術誌「Langmuir」に掲載)。 一方、南蛮文化館所蔵の類南蛮漆器についての分析を進め、研究成果を取りまとめて論文執筆を行った。さらに新規にポルトガルで発見された南蛮様式の初期の輸出漆器(書見台:2点)の科学調査に参加し、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属形状の観察を実施した。今まで得た平蒔絵技法の研究成果について、ポルトガルや台湾の研究者らと協議することができた。CT調査、蛍光X線分析、クロスセクション分析、SEM、Py-GC/MS等の分析をすべて含む論文を共同で執筆して国内誌に投稿する準備をしている。以上が、最終年度に実施した成果である。 研究期間全体を通してCOVID-19の世界的な流行拡大の影響をかなり受け、当初予定していた現地調査や実験の多くが実施困難となった。しかしながら過去に提供を受けた剥落片漆塗膜の追加分析を実施したり、データの整理やとりまとめを行いつつ、中世の金工品の黒色塗膜の再現実験やXAFSによる検討など、申請当初計画になかった新たな研究課題を取り込みながら展開できた。実施期間全体の最終的な結果として、黒色塗膜と平蒔絵材料を識別するための新たな自然科学的手法の一端を確立したと考えている。
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Research Products
(5 results)