2023 Fiscal Year Research-status Report
音楽学・民俗学とのインターフェイスを目指した新旧口承文化の実証言語学的研究
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20K20700
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 真一 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10331034)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 音韻論 / インターフェイス / テキストセッティング / 音楽 / プロソディー / 声援 / アクセント / 詩歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
新旧口承文化を一次データとして、言語学・音楽学・民俗学・国語学(日本語学)などの視点から、言語学的法則性を導くとともに、各分野において新しいを知見を得ることを目的とする。言語分析として、テキストセッティング(決められた枠の中に言葉を入れる操作)と借用語音韻論(外国語を借用する際の音韻変換操作)を軸とする。 口承文化の資料として、掛け声や遊び歌、歌謡等を材料として、材料間および新旧の異同を分析する。また、かくれキリシタン祈祷文「おらしょ」におけるラテン語からの変換操作とストラテジーを解明する。一連の分析に対し、音楽学、民俗学、国語学などからの視点を加え、学問分野間のインターフェイスを目指す。 コロナ禍により、旧タイプの口承文化の調査はひとまず脇に置き、新タイプの口承文化である、諸言語・日本語諸方言におけるテキストセッティングの現象の対照および深化を主な対象とする。異なるリズム類型に属する英語・ロシア語(強勢拍リズム言語)、イタリア語・フランス語(音節拍リズム言語)、日本語(モーラ拍リズム言語)などにおける詩や声援等にみられるリズムパターンを、可能な限り同一の観点から分析・対照し、それらの異同を分析する。 同時に、上記言語の記述的一般化にみられる諸制約を照らし合わせることにより、最適性理論(OT)の枠組みから、各言語の各現象に関わる制約の有無およびランキングを対照する。上記の作業に基づき、テキストセッティングの一般性を考察し、新知見を提供することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度からの課題である、現代口承文化のテキストセッティングと音韻・形態構造との関わりについて分析を継続・発展させた。コロナのため(当初予定していた)フィールドワーク調査の実施は行わなかったものの、書籍や映像、音源等からのデータ収集を通して資料収集は順調に(フィールドワーク調査を補完する形で、かつ継続的に)行うことができた。 現代口承文化のデータとして、前年度からの継続で、種々のテキストセッティング現象の収集及び分析を行った。日本語のデータとして、2拍子声援のデータ収集・調査・分析を継続した。それと並行して、音韻理論(OT: 最適性理論)の枠組みによる声援パターンの分析を行った。さらに、チャハルモンゴル語(中国内モンゴルの公用語)の2拍子声援の分析を継続し、言語および言語現象間における、セッティング方策の異同を、記述・理論両面から分析した。 アウトプットの面では、上記の結果について、複数の学会・研究会等の学術イベントでの発表および論文執筆という形で成果発表を行った。 上記のように、課題自体は概ね順調に進展しているものの、言語・方言、そして言語現象間の対照、同時に、音韻理論に基づく分析をさらに推進する必要性が新たに生じ、さらに1年間の期間延長することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
テキストセッティングの諸言語・言語現象による対照、および理論分析をさらに進める必要性が生じ、さらに1年間の期間延長することにした。とくに、上記データに基づく、最適性理論の枠組みによる分析を継続的に、かつ言語例・言語現象を増やしながら遂行し、言語間、現象間の対照を推進する。それと同時に、分析に必要な制約とランキングを整理し、種々の音韻現象との関係について考察する。 それらと並行して、追加調査とデータの整理を行い、一次資料としての体裁を整え何らかの形での公開を目指す。さらに、研究成果の発表を複数の学会・研究会で行う。可能であれば、本課題による研究イベントを開催し、成果を広く発表する。上記を推進しながら、複数の学会誌への研究成果の投稿を進める。 上記の一連の作業を通して、本研究課題の全体のまとめとして今年度を位置付け、研究を大きく推進する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により当初予定した調査が不可能になり、それにより、研究全体をまとめる計画にも変更の必要が生じた。余裕を持ってまとめの作業を遂行するため、1年延長することにした。補足調査および、成果発表、論文投稿、資料保存・公開など、研究最終年に関わる事項に対し、残額を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)