2021 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・キャンパスの言語マイノリティ―多言語事情とアイデンティティを探る
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20K20701
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴田 美紀 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (90310961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
STAICOV ADINA 広島大学, 学術・社会連携室, 助教 (90864645)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 留学生 / 高等教育の国際化 / EMI / 言語観 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル化に伴い、多くの国が高等教育の国際化に力を入れている。日本も例外ではなく、政府がEnglish-miedum instruction (EMI:講義で用いられる英語を指す)を奨励するなどして、留学生を積極的に受け入れている。しかし、彼らの言語実態についての学術研究はほとんどなく、特に日本語・英語のいずれも母語としない留学生の状況はあまり注視されていない。そこで、 本研究は日本語と英語の言語環境で学ぶ留学生の言語実態とアイデンティティとの関連性を多角的かつ包括的に調査するものである。 2年目の当該年度(2021年度)はオンラインアンケートとインタビューを実施した。まず、大学の学生向け情報ポータルサイトを利用して、5月下旬から7月初旬まで留学生を対象に協力依頼を掲載した。その結果、有効回答124が得られた。続いて、アンケートの最後でインタビュー協力の意思表示をした留学生にメールあるいは電話で日程調整を行い、10月初旬から1月中旬までオンラインでインタビューを行った。インタビューは1時間程度で、留学生が英語を希望した場合、研究代表者と協力者2名が英語で行い、日本語希望の場合、研究代表者が日本語で行った。結果、76名にインタビューを行うことができた。参加者の同意を得たうえでインタビューを録画し、業者に依頼して英語のインタビューのテープ起こしを終了した。 アンケート回答はJASPを使用して統計分析を行った。その結果、中国人留学生とその他の留学生との間に英語と日本語の言語能力と言語選択(母語・日本語・英語)に大きな差があることが明らかになった。さらに、この結果を踏まえて、留学生の言語使用とアイデンティティ、言語観との関わりを考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたアンケート調査とインタビューが終了し、必要なデータがそろった。また、アンケート回答は無効回答の有無を確認し、必要に応じて削除したうえで統計分析を始めている。インタビューは質的分析(Thematic analysis)に必要な英語のトランスクリプトが終了している。これらの現状を踏まえて、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート回答の統計分析を終了し、先行研究の結果も踏まえEnglish-medium instruction (EMI:講義を行う際に用いる英語を指す)や高等教育の国際化の点から結果を考察する。インタビューはMAXQDAを用いて量的分析を行う予定である。そして、分析結果から浮かび上がったテーマ(themes)を踏まえて、アンケート回答では測定できなかった留学生の言語使用の実状、言語アイデンティティについて探る。最終年度となる2022年度は、本研究の成果を学会発表および論文投稿で公表予定である。
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Causes of Carryover |
申請時に計画した、学会がすべてオンラインになり、国内外の旅費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。申請時に次年度分として請求した予算と合わせて、関連図書の購入(特に大学図書館のHPからダンロードが不可である国際ジャーナルの論文購入や年間購読費)、論文掲載費、および量的分析を行うMAXQDAのアップデートに使用予定である。本研究の申請時には、論文掲載費とMAXQDAのアップデート費用を予算計上していなかったが、昨今掲載費がかかるジャーナルが増えていること、MAXQDAを単年度契約にしたことから、これらの費用は必要経費と考える。
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