2022 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・キャンパスの言語マイノリティ―多言語事情とアイデンティティを探る
Project/Area Number |
20K20701
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴田 美紀 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (90310961)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
STAICOV ADINA 広島大学, 学術・社会連携室, 助教 (90864645) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 留学生 / 高等教育の国際化 / EMI / 言語観 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル化に伴い、多くの国が高等教育の国際化に力を入れている。日本も例外ではなく、政府がEnglish-miedum instruction (EMI:講義で用いられる英語を指す)を奨励するなどして、留学生を積極的に受け入れている。しかし、彼らの言語実態についての学術研究はほとんどなく、特に日本語・英語のいずれも母語としない留学生の状況はあまり注視されていない。そこで、 本研究は日本語と英語の言語環境で学ぶ留学生の言語実態とアイデンティティとの関連性を多角的かつ包括的に調査するものである。 3年目の当該年度(2022年度)は、スペインのセルビアで11月7日から9日まで開催された15th International Conference of Education, Research and Innovationにオンラインで参加し、研究成果を発表した。また、同学会のプロシーディングス(Web of Science)に論文が掲載された。学会では前年度に行ったアンケートの分析結果を発表した。日本語能力と英語能力のレベルと言語選択・使用の関わりについて、中国人留学生と非中国人留学生を比較した。前者は比較的日本語レベルが高い学生が多く、日常生活やアカデミックな状況で日本語を選択・使用しており、一方で後者は英語レベルの高い学生が多く、英語を選択・使用していることが明らかになった。 アンケートの量的分析では、申請書に記載した①留学生は母語・日本語・英語をどのように使い分けているのかに回答するものであるが、②彼らの言語使用は言語に対する認識とアイデンティティとどのような関りを持つのか、③状況によって変わる他者との関係性は、複数の概念(国家、言語、文化など)から形成される重層的アイデンティティにどのような変容をもたらしているのかの問いに回答するためにはインタビュー・データの分析が待たれる。2022年度は前年度に実施したインタビュー・データの分析を完了予定であったが、遅れており現在も継続して行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている理由は以下のふたつである。まず、2022年4月末に研究分担者が国外へ転職したため、それ以降は研究代表者がアンケート・データの分析をひとりで行っている。しかし、大学における教育と校務との兼ね合いで予定より時間を要し、結果遅れている。加えて、研究分担者はその資格を失ったが、評価者間信頼性(inter rater reliability)の理由から継続してデータ分析に協力してもらえることになっている。しかし、移動した後、現地での新たな環境に慣れるまで諸般の事情で数か月を要したため、分析がなかなか進まなかった。ただし、2022年度に研究打ち合わせは数回オンラインで行い、お互いの進捗状況を確認している。
|
Strategy for Future Research Activity |
継続してインタビュー・データの分析を完了し、結果の考察を行う。研究成果を関連学会で発表し、国際誌へ論文を投稿したい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、COVID-19の影響により国内外のほとんどの関連学会がオンライン開催であったことである。また、研究分担者が2022年4月より海外の研究機関に移ったため研究協力者となったが、新たな環境に慣れるまでに時間を要し、研究が進まなかったことも影響している。2023年度はお互いにインタビュー・データの分析を継続し、オンラインで打合せをしながら研究を進めていく。 2023年に開催される学会の多くが対面型(あるいはハイブリッド型)になりつつあるので、2名で関連学会に参加し、成果発表をしたい。
|
Research Products
(2 results)