2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K20714
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上原 浩一 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (20221799)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | イチョウ / 巨木 / RAD-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
イチョウ(Ginkgo biloba)はかつて世界中に分布していたがその後衰退し、日本国内では更新世を最後に途絶えた。その後中国南西部で生き延びたイチョウは平安時代以降に日本の全国各地に文化と共に広まったとされているが明確な伝播過程は明らかになっていない。イチョウはこのような生物学的、文化的背景から国内への伝来や伝播経路の研究が行われてきた。 本研究では次世代型DNAシークエンサーを用いた最新のRAD-seq解析により日本に分布している幹周8m以上のイチョウ巨木の網羅的遺伝解析を行った。最尤法でイチョウの起源とされる中国をルートとして地方間系統樹を作成したところ、東北地方をはじめとして本州を南下するように地方に対して遺伝的に近い関係を示した。中国に対して韓国と九州地方は遺伝的に遠い関係を示したが、韓国と九州地方同士は遺伝的に近い関係を示した。 地方間系統樹の結果から、日本にイチョウが伝来した経路は複数あるのではないかと考えた。中国起源のイチョウが東北地方側から入り、その後拡散されたもの、中国起源のものが朝鮮半島を経由してその後九州地方に入り拡散されたもの、である。このことは韓国の集団をルートにとって地方間の系統樹を作成すると、九州地方、次いで四国地方、中国地方と西日本から東日本に向かうように遺伝的に近くなっていることからも確かめられる。大陸からのイチョウの日本への搬入ルートについては中国、朝鮮、琉球の三つの可能性が高いとされていることや、イチョウは複数の産地から複数回に分けて持ち込まれたとみられることから、上記の二つのルートを通った可能性は高いと推定できる。ただ、今回用いた中国のイチョウサンプルは少なくそのうち朝鮮半島に近いものは少なく、大陸にある個体を網羅できたとは言えないのでより詳細な分析を行うにはさらにサンプルを増やして調査する必要がある。
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