2022 Fiscal Year Annual Research Report
博物館標本胞子を用いた絶滅集団の復元:簡易生存識別法と標本管理法の開発
Project/Area Number |
20K20715
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
志賀 隆 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (60435881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 将 新潟大学, 人文社会科学系, 特任准教授 (30624738)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 博物館 / 植物標本 / 胞子 / シダ植物 / 車軸藻類 / テトラゾリウム染色 / エバンスブルー / 発芽試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色試薬を用いた標本胞子の生存識別法を開発することを目的に、クサソテツ(コウヤワラビ科)の当年胞子に対して複数の処理を施し、テトラゾリウム塩(TTC、MTT)とEvans Blue(EB)、Trypan Blue(TB)による染色試験を行った。TTC染色に対してMTT染色は時間経過に伴って染色率が上昇し、発芽率よりも高く生存を評価した。また、死亡胞子を呈色するEB染色、TB染色では、発芽率が0%であった2処理[NaClO(有効塩素濃度4%)60分処理胞子、高圧蒸気滅菌処理胞子]において、それぞれ0~0.7%、100%といった顕著な染色率の差がみられた.検討の結果、クサソテツにおいて、MTT染色、EB染色、TB染色は胞子の生存評価には適さないと結論した。 シダ植物の標本胞子の発芽可能性の評価するために、オオハナワラビ(ハナヤスリ科)、スギナ(トクサ科)、ゼンマイ(ゼンマイ科)、クサソテツを対象に、5つの標本庫より得た計86標本の標本胞子について発芽試験・染色試験を行った。採集から255ヶ月(21年)経過したクサソテツの標本胞子1粒から発芽が確認されたが、それ以外の全ての標本胞子では発芽およびTTC染色による呈色は確認されなかった。 車軸藻類では、保存期間が卵胞子の発芽に与える影響を調査するため、昨年度までに作製し、1年以上保存したシャジクモの標本から卵胞子を得て、試験を実施した。また、標本卵胞子の発芽可能性を系統横断的に調査するため、シャジクモ、イトシャジクモ、オトメフラスコモ、Nitella sp.を試験対象とした。さらに、種内集団間の違いを調査するため、シャジクモについては研究対象の集団数を増強し(計5集団)、試験を行った。その結果、いずれの試験においても卵胞子の発芽は確認されなかった。 これら本年度の研究成果を含む植物標本に関する企画展示を2022年度に2回実施した。
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