2020 Fiscal Year Research-status Report
パンコムギの起原地はどこか?:植物遺伝学と考古植物学の協働による学際的研究
Project/Area Number |
20K20720
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
松岡 由浩 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (80264688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹野 研一 龍谷大学, 文学部, 准教授 (10419864)
佐久間 俊 鳥取大学, 農学部, 助教 (40717352)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | タルホコムギ / 二粒系コムギ / ユーラシア / 農耕史 / ゲノム比較 / 西アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
西アジアで誕生し、ユーラシア大陸全体に広がり、各地で文明を支えたパンコムギは、トルコ南東部を中心とする「肥沃な三日月地帯」で栽培化され「作物」となった二粒系コムギが、その畑の周囲に雑草として生えていたタルホコムギ(野生種)と自然交雑して誕生した。現在、パンコムギの正確な起原地は未だ不明であり、このことが、初期コムギ農耕の全体像を理解する上で重大な障害となっている。本研究は、ゲノム配列情報を用いた遺伝子比較解析を世界に先駆けてパンコムギの起原地研究に適用して植物遺伝学と考古植物学の成果を統合的に考察することで、初期コムギ農耕の成立と発展に関わる重要問題の解決に挑戦することを目的とする。 本年度は、タルホコムギ種内に存在する3つのlineage(共通祖先から派生した系統群)のそれぞれから選ばれた代表系統(合計3系統)の種子を増殖し、染色体立体配座捕捉法によるゲノム解析を開始した。また、代表系統のそれぞれについて、次世代シークエンサーによるゲノム解析に必要となる高分子DNAを精製した。さらに、二粒系コムギとタルホコムギを人為交配して得たデータを解析し、パンコムギ進化の初期過程では、二粒系コムギとタルホコムギの「交雑親和性」(交雑により着粒するかどうか)よりも、「雑種ゲノム倍化」(交雑でできた雑種のゲノムが倍化し遺伝的に安定するか)が重要な役割を果たしたことを示唆する結果を得て、論文として発表した(Matsuoka and Mori 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、発掘調査報告書などの資料を収蔵する図書館等への出張が困難となり、本格的な文献調査が実施できていない。このため「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
[研究計画の変更] 該当なし
[研究を遂行する上での課題] 新型コロナウィルスの世界的感染拡大の影響により、出張調査が困難となっている。
[対応策] 当面、遺伝子比較解析を優先的に実施し、状況が改善次第、出張を伴う調査を行う。
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Causes of Carryover |
[理由] 新型コロナウィルスの世界的感染拡大の影響により、委託解析(染色体立体配座捕捉法によるゲノム解析)に遅れが出ている。
[使用計画] 委託解析は2021年度前半に完了する見込みであり、この予定に沿って使用する。
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