2023 Fiscal Year Annual Research Report
パンコムギの起原地はどこか?:植物遺伝学と考古植物学の協働による学際的研究
Project/Area Number |
20K20720
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松岡 由浩 神戸大学, 農学研究科, 教授 (80264688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹野 研一 龍谷大学, 文学部, 准教授 (10419864)
佐久間 俊 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40717352)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | タルホコムギ / 二粒系コムギ / ユーラシア / 農耕史 / ゲノム比較 / 西アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
西アジアで誕生し、ユーラシア大陸全体に広がり、各地で文明を支えたパンコムギは、トルコ南東部を中心とする「肥沃な三日月地帯」で栽培化され「作物」となった二粒系コムギが、その畑の周囲に雑草として生えていたタルホコムギ(野生種)と自然交雑して誕生した。現在、パンコムギの正確な起原地は未だ不明であり、このことが、初期コムギ農耕の全体像を理解する上で重大な障害となっている。本研究は、ゲノム配列情報を用いた遺伝子比較解析を世界に先駆けてパンコムギの起原地研究に適用して植物遺伝学と考古植物学の成果を統合的に考察することで、初期コムギ農耕の成立と発展に関わる重要問題の解決に挑戦することを目的とする。 本年度は、新規にタルホコムギ322系統についてGras-Di解析を行い、昨年度解析した210系統と合わせて532系統について取得した一塩基多型(SNPs)データを用いてタルホコムギ種内の集団構造を詳細に解析した。その結果、パンコムギDゲノムと遺伝的構造の類似度が高いゲノムをもつ系統群(すなわち、パンコムギの祖先となったタルホコムギの子孫である可能性がある系統群)が、主にカスピ海南岸および西岸に分布することを示唆する結果を得、国際会議(招待講演)にて成果を発表した。また、考古学分野では、西アジアのイラノ・チュラニアン植生帯の中のとくにイラノ・アナトリアン植生帯において、木の実(アーモンド、ピスタチオ、エノキ)の利用が旧石器時代から新石器時代初頭にかけて続くこと、かつメソポタミア植生帯との境界付近で小麦農耕が発生してゆくことを、植生の文献調査と旧石器遺跡の出土植物同定により明らかにし、投稿論文として発表した。また、連携する海外研究者とタルホコムギ等の遺伝資源の現状に関する調査を進めた。
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