2020 Fiscal Year Research-status Report
Develop discipline of wood utilization for building regional circle and ecological sphere based on biodiversity
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20K20730
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 信也 九州大学, 農学研究院, 教授 (20215213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 伝統的木材利用 / 木材組織 / 木材物理 / 宮崎県椎葉村 / 生物多様性 / 地域循環共生圏 / 木材民俗学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「地域循環共生圏」の構築にむけた研究として本研究期間は,自然環境条件と人と森林との係りの歴史的背景が異なる4つの地域(北海道足寄町:冷温帯落葉広葉樹林,宮崎県椎葉村:中間温帯性針広混交林,福岡県篠栗町:暖温帯性常緑広葉樹林,中華人民共和国チワン族自治区:亜熱帯性常緑広葉樹林)を対象に,各地域における伝統的利用樹種の用途とその特性を調査したうえで,それらの樹種の諸特性を木材組織学・木材物理学的に評価し,伝統的な木材利用の民俗知に自然科学的妥当性を付与することを目的にしている. 本年度は,平家の落人伝説などで有名な宮崎県椎葉村を対象に研究を行った.本地域については研究分担者である内海が過去に民俗植物学的調査を実施し,伝統的利用樹種の用途とその特性を明らかにしているが,その伝統的利用樹種のなかから低木種を主体に47種,各樹種5個体,計235個体を九州大学農学部附属演習林宮崎演習林で選木した.各個体の成長特性として胸高直径と樹高を計測した後伐採し,木材特性として胸高部位付近の丸太の動的ヤング率,円板の容積密度数,辺心材の生材含水率,生材から全乾状態までの3方向(繊維方向,接線方向,半径方向)の収縮率,無欠点小試験片の曲げ破壊強度と曲げヤング率,腐朽による質量減少率等を測定し,得られた測定値と過去に実施された民俗的評価との対応関係等について検討した.まだ解析は十分とは言えない状況にあるが,経験的に高い評価を得ていた樹種は木材の密度が高い傾向にあるなどの結果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症拡大の影響で,当初予定していた北海道足寄町での聞き取り調査が実施できなかったこと,宮崎県椎葉村での樹木のサンプリングが予定よりも遅れ,加えて試験片の作製や実験を行うための時間が十分に確保できなかったことが理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では,今年度宮崎県椎葉村,北海道足寄町,福岡県篠栗町での伝統的利用樹種のサンプリングおよび成長および木材の組織学的・物理学的・力学的性質の測定を予定していたが,上記の「現在までの進捗状況」に記載したように,新型コロナ感染症拡大の影響で,北海道足寄町での聞き取り調査が実施できておらず,また宮崎県椎葉村で得られた試料の実験および解析が遅れている.したがって,今年度は,前年度実施できなかった北海道足寄町での聞き取り調査および前年度宮崎県椎葉村で得た試料の実験と解析を優先的に実施し,その後,今年度の計画にもとづき実施する。 令和4年度の中国チワン族自治区に聞き取り調査や現地でのサンプリングと実験については,新型コロナ感染症拡大の影響が次年度も続く可能性があることから,今年度末に実施するかどうかを判断する.ただし,研究室に所属する中国からの留学生等を通じて,伝統的木材の利用方法,木材の物理的・力学的性質に関する既往の報告の収集は進める.
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