2020 Fiscal Year Research-status Report
Development research on Rhythm and Dance Notation: A Case Study of Samba de Roda in Brazil
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20K20739
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Research Institution | Shikoku University Junior College |
Principal Investigator |
林 夏木 四国大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (20794481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
輪島 裕介 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50609500)
細谷 洋子 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (60389856)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 舞踊記譜法 / リズム舞踊譜 / 舞踊民族誌 / サンバヂホーダ / サンバ / ブラジル / アフロブラジル舞踊 / アフリカン・ダイアスポラ・ダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の長期的目的としては、民族的な舞踊が、その人類学的価値が失われることなく、身体を通して伝承されていく方法論を構築することであり、また短期的目的としては、民族的な舞踊の音と動きの「リズムの規則性」に着目し、その関係性を記譜法により可視化した上で、舞踊実践を可能にする新たな「リズム舞踊譜」の開発である。これは、人類学、民俗学における長年の課題である世界の民族舞踊の保存と伝承に寄与するものである。また、20世紀前半以降、音楽研究と舞踊研究はそれぞれ独立した状況が続いていたが、近年、民族音楽学における舞踊の位置付けが「ミュージッキング:音楽的行為の一環」として扱われるようになり、「音楽と舞踊の関係性」に着目した研究の一端を担うことになるであろう。 2020年度の研究実施計画では、サンバヂホーダ発祥の地であるブラジル北東部バイーア州のヘコンカヴォ地域への現地調査を実施する予定であったが、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大に伴い実現に至らなかった。よって、バイーア連邦大学の舞踊研究者(Conrado PhD)の協力を得て、サンバヂホーダの映像を入手し、研究方法論として民族誌(エスノグラフィー)を用い、音楽(輪島)と舞踊(和田・林)の分析を行った。音楽は3つの打楽器で演奏される基本的なリズムパターンを、舞踊は基本的なフットステップのリズムパターンを、西洋式のリズム記譜法で並列表記し、その後、Creative Cloud内の編集ソフト「After Effect」を用いて、①映像、②3つの楽器のリズムパターン、③イラスト化したフットステップ、を同時に映し出す映像制作を現在行っている。今後はこの映像を基に、先行研究および国内外の研究協力者・実践者への聞き取り調査を参考にしながら、実用性の高い「リズム舞踊譜A」の開発に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度内に予定していたブラジルでの現地調査は、新型コロナウイルス感染症の拡大により中止せざるを得なかった。現地で撮影予定だったサンバヂホーダの映像に近いクオリティのものを取得するまでにかなりの時間を要した。ブラジルの研究協力者に映像提供を依頼したが、個人が所有している映像の中に今回の研究対象として適切なものが見つからず、Youtube上の映像をいくつか紹介してもらうに至った。幸いにもその中にいくつか参考になる映像があり、音楽における基本的なリズムパターン、ダンスにおける基本的なステップパターンとその姿勢(前傾後傾、膝の屈伸の有無など)を、研究分担者、研究協力者(山口大学・和田直己先生)と共に分析を行った。その結果、音楽的特徴としてはアフリカ音楽特有の「ポリリズム」であること、各楽器で演奏される基本的なリズムパターン、ダンスにおける基本的なステップパターン、ダンス時の姿勢等が概ね明らかとなった。これらの情報を基に、①映像、②3つの打楽器の基本的なリズムパターン、③ダンスの基本的なステップパターン、の3つを同時に2元的に映し出す映像を現在、制作中である。打楽器のリズムパターンは記譜法にて、ダンスのステップパターンは「フットステップ(足あと)」のイラストを用い、Creative Cloud内のソフト「After Effect」を使用し、2021年5月中の完成を目指している。このデータを基に、「リズム舞踊譜A」の記譜法を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究計画としては、まず初めに①映像、②3つの打楽器の基本的なリズムパターン、③ダンスの基本的なステップパターン、の3つを同時に2元的に映し出す映像を完成させる。これを国内外の研究協力者および実践者に視聴してもらい、様々なアイディアの提案を請う。これらの提案と従来の舞踊記譜法に関する先行研究を元に、「リズムと舞踊の関係性」を可視化でき、また、舞踊を理解し習得する上で実用性の高い「リズム舞踊譜A」の完成を目指す。研究計画の変更としては、ロコモーション研究機関(山口大学ほか)や外部の映像技術者(京都大学ほか)の協力を得て、「フットステップ」や「リズム舞踊譜A」のデジタル映像化を試みる予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内の移動も難しかったことから、直接的な共同作業が可能である本学の上野昇准教授(生活科学部)に依頼することとなった。また、今後、研究を遂行する上での課題としては、ブラジルでの現地調査が研究課題期間中に可能であるかどうか見通しが立たない点が挙げられる。その際には、インターネットを最大限利用した方策を検討する必要があるだろう。例えば、現地の研究者への調査協力、Zoomなどを利用した現地実践者への聞き取り調査の実施、また、サンバヂホーダ研究者によるフォーラムの開催などが考えられる。今後の動向を注視しつつ、対策を講じていきたい。
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Causes of Carryover |
主な理由は、新型コロナウィルス感染症の拡大により、ブラジルでの現地調査が実施できなかった故に、旅費を使用しなかったこととそれに伴う人件費が使用されなかったことである。 次年度の使用計画としては、再度、ブラジルへの渡航を検討し、実現を目指したい。もし再度叶わない場合には、現地の研究者に調査協力を依頼し映像を入手することや、現地の実践者への聞き取り調査をZoomなどを利用して実施することなどを検討しており、それに伴う人件費に充てたいと考えている。さらに国内において、可能な現地調査へ代替する。例えば、サンバの音楽や舞踊に関わってきた実践者への聞き取り調査や実践時の撮影し映像分析を行うこと、また、民俗舞踊の身体技法研究者(進藤貴美子)への聞き取り調査を実施することなどである。これらに伴う人件費、移動費、機材費等が必要になると考えられる。また、リズム舞踊譜のデジタル表記も検討しており、その場合には、大規模な商品開発が必要となる。それに伴う費用に補填することも検討している。
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Research Products
(2 results)