2021 Fiscal Year Research-status Report
バイアス分析の手法によるドイツ領アフリカ植民地のグローバル・リーガル・ヒストリー
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20K20740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田口 正樹 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (20206931)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / ドイツ / 法学 / 植民地 / 植民地主義 / 法史 / グローバル・リーガル・ヒストリー / 比較法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツが第一次世界大戦前に事実上支配下に入れていた海外領土のうち東アフリカ植民地(現在のタンザニア、ルワンダ、ブルンジ)を主な対象として、ドイツ側の現地法調査プロジェクトをバイアス分析の手法を応用して考察し、西洋法学の理解枠組、それによって変形された現地法、現地法の固有の層、の三層を相互関係のもとに把握することを通じて、グローバル・リーガル・ヒストリーとしてのアフリカ法史研究を開拓することを目的としている。 今年度は計画の第2年度であり、本来は1908年に行われた大規模な現地法調査アンケートの回答の分析に取り掛かる予定であったが、引き続き新型コロナウィルス感染症の影響により海外渡航のハードルが下がらず、また今年2月末のウクライナ戦争勃発も加わって、ドイツ・ポツダムの連邦文書館所蔵の回答史料へのアクセスを得られなかった。そのため、上記大規模アンケートに先行した試験的調査の回答に基づくJosef Kohlerらの論考や、上記大規模アンケートの回答に基づき第一次世界大戦終了後にまとめられたBernhard Ankermannなどの論述を用いて、ドイツの法学者たちによる整理の結果を確認し、来年度の文書館調査の準備を行った。 平行して、ドイツの海外領土支配の制度と実情を、イギリス・フランスなどの場合とも比較しつつ把握することにつとめ、現地法調査が置かれた文脈の理解の精緻化を図った。特に、現地法調査を実地で担った宣教師、植民地官吏、植民地軍人について、事例検討を進めた。あわせて、KohlerやFelix Meyerなど現地法調査の中心となったドイツの法学者たちについても、彼らの比較法学が当時のドイツ法学界で占めた位置等を考察した。また、ドイツ本国における植民地主義の表出形態や、海外領土喪失後に残った影響に関しても、二次文献によりつつ認識を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響で引き続き海外渡航のハードルが高く、また今年2月末のウクライナ戦争勃発も加わって、ドイツの文書館における史料調査や、ドイツ人研究者との意見交換ができなかった。史料調査をさしあたり迂回する形で研究を進めることを余儀なくされたため、研究の進捗にはやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の広がりはようやく落ち着きつつあるようであり、またウクライナ戦争も目下のところ局地化しつつ長期化する様相である。したがって、日本における他の活動と両立可能な形での海外渡航の条件が整いつつあり、今夏以降ドイツへ渡航して、文書館における史料調査を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
ドイツへの渡航とドイツの文書館・大学図書館での調査を予定していたところ、新型コロナウィルス感染症とウクライナ戦争の影響で実施できなくなったため、次年度使用額が生じた。今夏以降、ドイツ等への渡航とドイツ等における滞在に使用する予定である。
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