2022 Fiscal Year Research-status Report
Developing a System for Reading Qualitative Attributes of Firms from Financial Data with Pettern Recognition Method
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20K20755
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小沢 浩 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (40303581)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 財務諸表 / パターン認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、MTシステムのうちのRT法とよばれるパターン認識の技術を使って、公開財務諸表の数値から、企業の定性的な性質、例えば、企業の属する業種、戦略的ポジション、財務的健全性などを判定することに挑戦する研究である。その最初の段階として業種の識別に挑戦している。これまでに、自動車、商社、製鉄、電力、医薬品、製紙、百貨店、家電などの業種の識別を試みた。そして、流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益の各項目を、(総資本+収益)に対する比率で規準化すること、1966年から1977年のデータを単位空間とすることで、識別力が高くなることを発見してきた。ただし、同じ業種であっても、年度の経過とともに財務データのパターンが変わってしまうために、時間に対する頑健性に問題があった。そこで、今年度は、この問題を解決することに注力した。そして、百貨店と電力が時間の経過に対して頑健であることを突き止め、百貨店を単位空間として、百貨店との比較で業種を識別することを試みた。その結果、商社、百貨店、電力、私鉄、造船、カメラの業種に関して、1966-1974年においては、ほぼ完全に識別できた。1976-1984年、1996-2004年、1986-1994年と時代を下るにつれて識別力が低下するものの、商社、電力、私鉄の3業種については、識別力が維持されている。今後は、造船、カメラ、百貨店の識別力を高める方法を模索する。また、同時に、造船、カメラといった製造業が百貨店の財務パターンに近づいている現象が観察されるため、これを事実の発見として受け止め、こうした現象の背景を解明してみたいとも考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の核心は、試行錯誤を繰り返して探索的に、識別力を高める単位空間を発見したり、前処理の方法を発見したりすることにある。その意味で、狙い通りの結果がでるか否かは、私自身の洞察力、試行錯誤の回数にかかっているといえる。これまでに考えつく様々なアプローチを試みてみたが、良い結果が得られていない。また、試行錯誤するためのアイデアがなくなりつつあり、ペースが鈍っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、2つのことを考えている。一つは、試行錯誤するためのアイデアがなくなりつつあることから、単純な試行錯誤をやめて、MTシステムの別の手法(T法(1))で、時間の経過に対して頑健な財務数値を選別することを試みてみたい。もう一つは、これまで業種の識別が可能という前提で、識別方法を探索してきたが、時間を下るにつれて識別が困難になっている事実の背景を調査してみたい。識別不能となる現象を、識別技術の欠陥と考えるのではなく、識別技術によって新たな事実が発見されたと位置づけることができれば、本研究の価値を訴求することができる。具体的には、製造業の財務パターンが小売業に近づいていることは、製造業の設備投資戦略や在庫政策の変化など、製造業の実態の変化を反映している可能性がある。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた講習会、セミナー等が、学務等との日程と重なって、参加できなかったため。また、研究の進捗自体も遅れており、行き詰まっていたため、打開策を見つけるまで、新規のデータ、機材、ソフトウェアの購入を見送ることにしたため。次年度は、講習会やセミナーに参加して、新しい分析法を模索するとともに、機材とソフトウェアを充実させて、研究を加速させたい。また、研究の方針として、分析方法を改良するだけではなく、現在の分析結果が妥当であることの検証を行いたいと思っている。次年度使用額は、そのための資料の購入や、情報収集にも充当したいと考えている。
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