2020 Fiscal Year Research-status Report
非対照実験を用いた政策評価・形成プロセスの戦略的設計
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20K20756
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田村 彌 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (60711950)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 実験 / 設計問題 / 最適化 / 期待効用理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はモデル構築の第一段階として、単純化された定式化と部分的な拡張の検討を行った。実験者が被験者を募集し実証実験を通じてデータを収集するというプログラム評価モデルを考え、実験の募集人数のみをコントロール変数とする基本モデルを構築した。そのモデルに対して以下の3点の拡張を検討した。(1) 実験者が(ランダム化を含む)処置割当の操作が可能である場合の最適制度設計の定式化を検討した。現実の実証実験では様々な制約が課されるが、それらがどの程度問題なのか評価するためのベンチマークを得るために必要な分析となる。(2) 被験者の実験参加選択が最適化を通じて内生的に決まるモデルの構築を行った。期待効用理論に基づく合理的経済主体を仮定したモデルを用いた分析からはじめ、いくつかの非期待効用理論の導入を試みた。現実の人々の行動原理はその文脈に強く依存するため、分析結果が仮定に過度に依存しないことが求められる。(3) 同じ被験者が繰り返し参加し、実験者がそれを特定できる設定への拡張を行った。利用可能な情報が増加し問題が簡単になる利点と参加インセンティブの分析が複雑になる欠点があり、扱いやすい数理モデルを模索した。いずれの拡張においても現時点では十分な解析ができているとはいえず、複数の要素から取捨選択を行いモデルの構築および精緻化を行う段階にある。次年度以降は当初の計画に従い、最適設計問題の定式化および費用便益分析の基礎づけに取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通り進行している。当初の計画にはなかった非期待効用理論の導入によって検討項目が増加した一方、モデル構築は比較的順調に進んでいるため特に遅れは生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きモデル構築を進める。特に被験者の参加インセンティブの分析を拡充するため行動経済学的な要素(現在バイアスあるいは参照点依存)を取り入れる取り組みを行う。その後、数理解析および理論的な特徴づけに取り組む。
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Causes of Carryover |
研究環境に関して不確定要素があったことにより、予定されていたパソコンおよび関連機器の購入を先送りにした。2021年度前半に購入を予定している。
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