2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20759
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山田 宏 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 教授 (90292078)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 空間計量経済学 / スペクトルグラフ理論 / 空間自己相関 / Gearyのc / MoranのI / HPフィルター / bHPフィルター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,空間計量経済学に,スペクトル・グラフ理論[数学の一分野であるグラフ理論の中でもグラフ構造を反映する行列の固有値・固有ベクトルについて研究する学問分野]の知見を持ち込み,空間計量経済分析を発展させることをその目的とする。今年度は主に次の4つの研究で成果が得られた。(i)空間トレンド・フィルタリングに関する研究: 空間データから,Gearyのcの意味で正の空間自己相関の高い成分を抽出するための新たなフィルターを提案し,その手法を使うことにより空間データから正の空間自己相関の高い成分をうまく抽出できる様子を数値的に示した。研究成果をまとめた論文は2023年度に2つの査読付き国際研究集会にて研究報告することが決定している。(ii)ブーストされたHPフィルター(bHPフィルター)に関する研究: 近年,経済時系列データの有力なフィルタリング手法の一つであるHPフィルターの改良版であるbHPフィルターが提案され注目されている。しかし,この新しいフィルターに関してはまだその性質がよく分かっていない。そうした背景の下,本研究ではbHPフィルターとHPフィルターの差異を罰則行列のスペクトル分解を使って明らかにした。研究成果をまとめた論文は,国際学術雑誌にて査読中である。(iii) MoranのIと幾つかの自己相関係数に関する研究: 空間自己相関を量る有力な指標の一つであるMoranのIは幾つかの自己相関係数を一般化した指標であると見なすことが出来ることに気付き研究を進めてきた。今年度,この研究をさらに進めた結果,研究成果を取りまとめた論文が査読付き国際学術雑誌に受理された。(iv)分位点版HPフィルターの開発: HPフィルターの一つの改良版である分位点版HPフィルターの開発に従来から取り組んできた。今年度,この研究をさらに進め,研究成果を取りまとめた論文が査読付き国際学術雑誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,空間計量経済学に,スペクトル・グラフ理論[数学の一分野であるグラフ理論の中でもグラフ構造を反映する行列の固有値・固有ベクトルについて研究する学問分野]の知見を持ち込み,空間計量経済分析を発展させることをその目的としている。研究期間の最初の2年間でどういうグラフとグラフ信号のとき,Gearyのcが0や2もしくは1に近い値になるかをグラフ・フーリエ変換を使って調べるという研究課題に取り組み,その構造を解明することに成功した。研究成果をまとめた論文はIF付き国際学術雑誌に掲載された。加えて,研究期間の2年目,3年目には,空間データから,Gearyのcの意味で正の空間自己相関の高い成分を抽出するための新たなフィルタリング手法を開発することに取り組んだ。研究成果をまとめた論文は,2023年度に2つの査読付き国際研究集会にて研究報告することが決定している。その他,研究期間の3年目には,最近注目されているブーストされたHPフィルターに関する研究を行った。研究成果をまとめた論文は,国際学術雑誌にて査読中である。こうしたことから本研究は「おおむね順調に進展している」と判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は,空間計量経済学に,スペクトル・グラフ理論[数学の一分野であるグラフ理論の中でもグラフ構造を反映する行列の固有値・固有ベクトルについて研究する学問分野]の知見を持ち込み,空間計量経済分析を発展させることをその目的とする。今後は,過去3年間の研究期間中に取り組み完成に至っていない研究の完成を目指す。そうした研究には,(i)空間データからGearyのcの意味で正の空間自己相関の高い成分を抽出するための新たなフィルタリング手法に関する研究や(ii)最近注目されているブーストされたHPフィルターに関する研究が含まれる。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の世界的大流行に伴う渡航制限により予定していた国際学会への出張や海外研究機関訪問等を断念せざるを得なかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。今後,必要な海外出張を再開し研究を進めることを計画している。
|
Research Products
(4 results)