2020 Fiscal Year Research-status Report
「下級財」に関する経済学的研究:効用関数の構築と環境問題への応用
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20K20762
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 下級財 / 効用関数 / ギッフェン財 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、下級財をもたらす効用関数の構築を行なった。本研究では、代替可能な2財のモデルにおいて、個人の効用が財の「質」と「量」に明示的に依存して決定される効用関数を構築した。そして、(1)下級財が生じる条件(2)さらにギッフェン財が生じる条件を明らかにした。特に、効用関数において質的な効用が線型で表されるならば、必ず下級財が生じることを示した。 さらに、量的な性質が向上すると需要が減少してしまうという財(DDQTC財)を定義し、この財が生じる条件を示した。また、DDQTC財は、必ずギッフェン財を含むものであり、さらにある条件のもとでは下級財に含まれる、下級財とギッフェン財の中間の財であることも明らかにした。また、文献研究により、途上国の農村で利用されている薪を使うストーブがDDQTC財の特徴を持つことを論じた。このように、下級財のより詳細な分類化を行うことができた。そして、こうした分析に基づき、上記の性質を示す特定の効用関数を2つ提示し、数値例で分析結果を提示することができた。この研究はディスカッションペーパーの形でまとめている。特定化された効用関数に基づき、資源管理問題研究への適用を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下級財と環境問題との関連を研究する上で不可欠な効用関数についての研究により、下級財が存在する条件等が明らかになった。本研究は、この準備的研究が完成することが必要であるので、次の段階に進むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
下級財についてまとめた研究を投稿し、論文として公刊する。また、得られた結論に基づき、計画している自然資源管理問題に適用する予定である。また、実際に、マレーシアを訪問し、自然資源の利用と下級財としての性質について調査研究を行う。
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Causes of Carryover |
下級財の実際の調査研究にマレーシアを訪問する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響で訪問できなかったことによる。今年度は、訪問を実施し、自然資源における下級財についての実際の例を聞き取りにより調査する予定で合る。具体的には、自然資源の利用についてボルネオ島マレーシアのサラワク州で、低所得者層が利用している森の資源および所得が増加すると代替的に購入する市場で販売されている財を見出すことである。ここにおいて、現地調査の費用を計上している。この例をもとに、自然資源と下級財について、昨年度に実施した理論研究に基づき、分析を行う予定である。また、結果をいくつかの国際学会で公表することを計画している。これに対する、英文校閲費、学会参加費、旅費を計上している。
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