2022 Fiscal Year Research-status Report
「下級財」に関する経済学的研究:効用関数の構築と環境問題への応用
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20K20762
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 下級財 / 自然資源 / グリーンインフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究の目的の一つである発展途上国での資源利用および防災・減災について所得水準が低い場合に活用されてきたグリーンインフラの利用の背景にある要因についての研究を行った。先進国・途上国を問わず、グリーンインフラが選択される理由には、人工構造物の建設費用が財政的にかさむことが挙げられるからである。そして、その背景の一つである特に不確実性についての市民の認識についての研究を行った。その結果の一つとして、不確実性が十分大きい場合には、市民はリスクを重視するが、不確実性が十分低い場合にはそれほど重視しないことが選択型実験により示され、英文学術誌に掲載された。また、グリーンインフラが促進されてきた背景をイギリスを対象に調査した研究を行った。イギリスにおいては、不確実性やリスクについて市民にできる限り正確な情報を伝えていることが挙げられる。この研究は和文学術誌に掲載された。 また、発展途上国の資源利用についてはどのような形で自然資源を国立公園などの保護区設定を通じて保護するのかを研究した。この研究は大規模な数少ない保護区で自然保護を行うのか、あるいは小規模な数多い保護区で行うのいいのかを考察するSLOSS問題の拡張問題として捉えられる。この研究では生物多様性の異質性の特徴と関連した結果が出た。具体的には、異質性が高いほど小規模で数多い保護区が望ましいという結果が出た。この論文は、日本生態学会で共著者が発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下級財についての基本モデルの作成は完成しているが、コロナ禍で、実際に自然資源の利用について、マレーシアに調査に訪れることが叶わなかった。この点で、自然資源を含めたモデルづくりが遅れている。一方、低所得を想定したインフラや自然資源の範囲での研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下の通りである。 1) 下級財をもたらす効用関数についての研究を投稿して公刊する。2)マレーシアを訪問し、熱帯林周辺の人々の自然資源利用についてヒアリングを行う。3)ヒアリングした内容を整理し、自然資源利用についての経済モデルを構築する。そのモデルに基づき、自然資源利用と自然資本ストックの変化についての分析を行う。4)あわせて、これまでの研究に基づき、自然資源の保護および途上国のグリーンインフラについての考察を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で自然資源利用の調査が出来なかったが、今年度は外国での調査及び国際学会での報告を予定している。
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