2023 Fiscal Year Research-status Report
「下級財」に関する経済学的研究:効用関数の構築と環境問題への応用
Project/Area Number |
20K20762
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 下級財 / 自然資源 / 発展途上国 / グリーンインフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、下級財モデルの適用として自然資源利用を考えている。この自然資源利用の研究として、自然資源(生物多様性)保護を司る国立公園の管理について研究を行った。この研究では、2つの異なる経営スタイル(すなわち、非営利機関と営利機関)の下で管理されている国立公園において、地域住民を観光事業に参加させることが、野生生物の保全にどの程度影響するかを調査するために、生物経済モデルを開発した。一般に、国立公園は非営利機関であるが、南アフリカなどでは、土地所有者による観光事業も行われている。すなわち、後者においては営利機関であると考えられる。 このモデルにおいては、地域住民は国立公園の観光事業に従事する一方で、農業生産活動とのトレードオフを持つ。地域住民は、国立公園との労働の需給関係において決まる賃金率にもとづき、国立公園事業に参加を自発的に決定する。また、野生生物は、正または負の影響を農業活動に与えるものとする。分析の結果、野生生物の保護が農業生産性を低下させない場合、非営利機関は営利機関よりも地元住民の効用を高め、野生生物の保護を促進することを証明した。一方、野生生物の保護が農業生産性を低下させる場合、非営利機関は営利機関と比較して、必ずしも地元民の効用を高めず、保全も改善しないことも示された。両者における均衡を社会的最適の観点から比較し、両者が一般に社会最適を達成しないことが示された。この研究は共同論文として英文国際誌に公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論研究では、自然資源に関する論文を公刊することができた。下級財の基本モデルと論文はほぼ完成しており、投稿準備中である。実証研究面では、コロナ禍で長らく海外を訪れることができなかったが、ようやくマレーシアでの調査を実際に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
下級財についての理論研究を投稿し、公刊する予定である。この研究は、純粋理論研究であるが、マレーシアの事例を盛り込む形で、より下級財と自然資源の関係を表すことを計画している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していた海外での研究活動が遅れていた。本年度は、マレーシアでの調査、および国際学会での方向を行う。
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