2020 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism design of collective wisdom on inductive learning: Theory, experiments and simulations
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20K20766
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 竜一郎 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80345454)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 資産価格取引実験 / 量的緩和政策 / ベイジアン自白剤 / NPS / 推奨意向 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、意思決定における帰納的アプローチと市場制度の関係を被験者実験によって検証した。また、推奨意向を通じた顧客満足度調査方法にゲーム理論的な基礎付けを与えた。以下のその詳細を説明する。 被験者実験による検証では、中央銀行が量的緩和(QE)によって現金の代わりに債券を購入した場合の効果を実験的に調べた。この実験では、債券は現金の完全代替品であり、合理的期待均衡においてQEの影響を受けない一定の基礎的価値を持っている。実験の結果、QEを行わない場合に比べて、QEによる政策が債券価格を上昇させることが示された。QEを行わない場合には、被験者は債券が基礎的価値で取引される経験を得た一方、QEを行う場合の被験者は債券価格が押し上げられることを帰納的に推論するようになった。このことは、実際のQEオペレーションによる債券利回りへの効果に、帰納的推論による価格押し上げの可能性を示唆している。 推奨意向に基づく顧客満足度調査のゲーム理論的基礎づけでは、ベイジアン自白剤やネット・プロモーター・スコア(NPS)とよばれる、アンケート調査の信頼性に関する研究を始めた。こうした推奨意向に基づくアンケート調査は不完備情報ゲームで定式化でき、ベイジアンナッシュ均衡で正直な申告が実現できるかが問題の焦点となっている。当該年度において、そうした性質の均衡が達成されるための枠組みを提示し、現在その性質を調査している。 こうした推奨意向の必要性は、経験財などの消費においては消費者が効用評価を事前に行えないことにある。そのため、すでに消費を行なった消費者の評価を用いて財評価の集合知を構成し、消費前の消費者の帰納的推論を助けることで社会厚生を改善できる。この集合知の精度向上を検証するための枠組みが与えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このプロジェクトの初期調査として、量的緩和に関する実験を行い、国際雑誌に発表することができた。また、推奨意向に基づく顧客満足度調査を基礎付けるための理論的枠組みを予定よりも早くスタートすることができた。このため推奨意向に関する実験の準備を予定より早く行う見通しがつき、次年度には行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
推奨意向を含む顧客満足調査などの一般的なアンケート調査を不完備情報ゲームで定式化したため、今後はその均衡が持つ性質をより精査する予定である。均衡の性質を調査するために、効用関数として与えられるスコアリングルールの感応度や均衡そのものの頑健性が重要になるため、今後はその点を精査していく。 こうした理論的性質を精査した後、実験を通じて人々の回答行動を検証し、被験者がどの程度真実に則った回答を行うかを分析する。これを通じて、経験財などの事前に効用評価が難しい財に関する評価形成や帰納的推論に関する行動モデルを構築し、集合知と個人の推論の関係を調査する。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナ感染症の影響で、海外出張および実験が滞った。コロナ感染症の収束の程度にも影響するが、コロナ感染症が収束すれば、進捗が大きく前進すると考えている。
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Research Products
(5 results)