2020 Fiscal Year Research-status Report
オントロジー工学による会計上の不正仮説生成に関する研究
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20K20770
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
瀧 博 立命館大学, 経営学部, 教授 (20292138)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | デジタル・トランスフォーメーション / リモート監査 / デジタル監査 / AQI / 不正会計事例のデータベース / 不正リスク仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初はアメリカのエキスパートシステム研究の調査を行う計画であったが、新型コロナウィルス感染症対策で現地の研究者等のヒアリングが困難となったこともあり、①他分野、とくに医療分野における人工知能研究や仮説生成等の調査(医療系の学会への参加、医師へのインタビュー調査、医療分野のマニュアルの状況など)、および②新型コロナウィルス感染症による上場会社の会計及び監査への影響(令和2年度科学研究費助成事業交付申請書に記載の通り)の調査を行った。 ①については年度末において継続中であるが、②についてはその基礎となる研究としてDX(デジタル・トランスフォーメーション)が監査手続に与える影響をまとめ報告している。すなわち、新型コロナウィルス感染症下においてはDXが進んでいる企業とそうでない企業で、リモートでの会計や監査の可能性に大きな差が出ているとの報告がすでに出ている。そこで、監査のリモート化・デジタル化が、監査手続に与える影響を、大手監査法人が公表している透明性報告書を基礎に検証した。大手の監査法人では、AQI(監査品質指標)として監査のデジタル化(AI化を含む)を採用しており、また、不正への対策として、別途、過去の不正会計事例のデータベース化を進めている。このことは、本研究の問題意識である不正リスク仮説の生成から説明がつく。監査のデジタル化は、異常項目の検出には役立つが、その理由を考える(不正リスク仮説の生成)のは監査人であって、それは、不正事例のデータベースを利用して検出するというものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、もともと新型コロナウィルス感染症のため採用通知が遅れていた(7月末)。また、同感染症対策のためのWeb授業の準備(オンラインコンテンツの作成)に相当の時間を要し、さらに受嘱している公認会計士試験委員の仕事が、公認会計士試験の実施時期の延期により日程が通常の授業・研究期間にずれ込むなど、新型コロナウィルス感染症による影響は大きかった。エフォート率は当初の予定の30%から5%以下に落ち込んだ
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、2020年度に実施できなかったアメリカにおけるエキスパートシステム研究の調査を行うとともに、公認会計士との協力を得て、現実の監査手続を、部分的であれ、直にオントロジーに落とし込むことを計画している。 実は、当初計画していた監査基準や実務指針をオントロジーに落とし込むことは、そのままではできない、あるいは無意味であることが、公認会計士等へのインタビューで分かってきた。実際の監査手続は、監査基準・監査の実務指針から読み取れる内容とは異なることも分かってきたのである(これは多くの監査論のテキストの解説が誤っていることも意味する、貴重な発見であった)。さらに、公認会計士試験の論文式試験の答案の採点を通じて、専門に勉強している受験生たちですら、以外に誤解が多いことにも気付いた(この具体的な内容は守秘義務があり摘示して公表することはできないが、将来の実験計画には行かす予定である)。 そこで、直に公認会計士から知見を得てオントロジーに落とし込むことを計画している。また、そのような公認会計士の協力についても内諾を得ている。また、2020年度における医療分野における医師の仮説生成についても継続的に調査を進め、監査分野への応用を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウィルス感染症により、web授業準備のため当初の計画通りに研究を進めることができなかった。そこで2021年度は、2020年度に実施予定であった研究、すなわち、アメリカにおけるエキスパートシステム研究の調査を行うとともに、公認会計士との協力を得て、現実の監査手続を、部分的であれ、直にオントロジーに落とし込むことを計画している。また、そのような公認会計士の協力についても内諾を得ている(人件費と謝金についてはその中で使用する)。なお、旅費等については、コロナ禍が収まり次第使用する予定である。また、2020年度における医療分野における医師の仮説生成についても2021年度に継続的に調査を進め、監査分野への応用を検討する。
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