2021 Fiscal Year Research-status Report
社会調査的「知」とAI的「知」の比較検討-コミックマーケット調査の再分析
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20K20778
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 あかし 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (60222056)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 社会調査 / AI |
Outline of Annual Research Achievements |
コミックマーケット30・40周年調査の統計的手法による分析としては、前年度の暫定的な結論をもとに、二十歳以上で「男性で投票した/しなかった」「女性で投票した/しなかった」の4つのグループの作品選好に関する因子得点を算出し、比較した。マンガ・アニメにおける性的表現への制限が話題になっていたなか、作品傾向「性的描写」を好む傾向を示している人たちのほうが投票した、と想定していた。しかし比較してみたところ、男女とも「投票した/しなかった」の両グループの間には因子得点の有意な差は確認できなかった。他方、AIによって、作品選好パターンを分類し、投票傾向と関連付けることができるか試みたが、これも顕著な結果を得ることができなかった。従来手法である統計分析によって何らかの傾向が確認できないものについて、AIならば何かが出てくるかという、現在のところ、成功していない。 本年度からの取り組みとして、AIによる社会文化的データ分析の可能性を探るため、ディープラーニングによる文章分類、と、旧来手法であるKH Coderによる議題の時系列推移の分析を比較する試みを開始した。学習データとして「COVID-19 日本語Twitterデータセット」を、評価データとしてNHKの番組「フェイク・バスターズ 新型コロナワクチンと誤情報」(2021年8月10日)が放送された時間帯の関連ツイートを使用し、SonyのNeural Network Consoleを用いて分類を行ったが、期待していたほどの精度は得られなかった。精度の高い学習データを確保することができていないことが理由だと考えられる。一方、関連ツイートを時系列でグループ化して、KH Coderで抽出後の対応分析を行ったところ、議題の時系列推移が確認できた。これらの分析手法を駆使し、ネット投稿の分析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧来手法の統計学的手法によるデータ分析と、AIによる分析を比較する本研究の進捗状況としては、それぞれ実施する方法は確立できているので、一定の進捗はあったことになる。具体的にデータを入力して分析作業を行った結果としては、統計手的分析ではいかにも統計的に分析した結果が得られ、AIによる分析ではいかにもAIによる分析結果が得られている。ただし、AIによる分析では、社会意識に関する統計調査としては異例とも言える多数の回答を得ているコミケ調査でも、サンプル不足気味で、過学習となる場面が少なくない。AI活用の限界に突き当たっているとも言えるが、AIの利用可能性そのものを検討するという本研究の調査設計においては、これもまた、予想されていた結果の1つであるので、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
統計データを、AIによって再分析することによって、AI分析の可能性を探る本研究であるが、AI分析が得意とするビッグデータとまでは言えない統計データを対象とした分析では限界があるので、今後、ネット投稿等を対象とし多量のデータを収集し、これについて、旧来分析手法とAI分析との比較検討も行っていく。既に、「COVID-19 日本語Twitterデータセット」を対象として予備的な検討を行ったが、現在、ロシアのウクライナ侵攻に関するTwitter投稿をデータとして収集中であり、多量のデータが収集されているので、今後、このデータについても、検討を加えていく予定である。かつて、湾岸戦争に関して行った2チャンネル投稿の分析とも比較しつつ、何らかの成果が出ることを期待している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、夏のコミックマーケットが中止され、冬には再開されたものの極めて小規模となり研究意義が見いだせないことから、追加取材のための東京出張をとりやめた。このため、旅費が未消化となった。また、技術革新によるコンピューター処理能力の向上により、当初予定よりも機器関係の支出が低減された。 次年度は、コミックマーケットの運営状況をにらみつつ追加取材を試みる。また、これまでに行った分析結果(中間データ)が膨大になってきたところから、データ処理関係の人的パワー増強のため、人件費を支出することも検討している。
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