2022 Fiscal Year Annual Research Report
社会調査的「知」とAI的「知」の比較検討-コミックマーケット調査の再分析
Project/Area Number |
20K20778
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 あかし 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (60222056)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | AI / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会調査データの分析にAIを用いる可能性について検討し、AIの社会科学における可能性を探ることを目指した本研究の最終年度は、これまでの検討結果を踏まえて、既存データの再分析ではなく、ネット上でデータを収集し、それをAIによって分析する可能性について評価することに取り組んだ。 まず学習データとして、第49回衆議院選挙、第26回参議院選挙それぞれの前後(2021年10月19~31日、2022年6月22日~7月9日)における、各主要政党のツイッター公式アカウント、立候補者のツイッター・アカウント(フォロー1万人以上のものに絞った)からツイートを集め、各政党のツイートの特徴をAIに学習させた。このAIによって、一般のツイートを、どの政党を支持するものか判断(ディープラーニングによる文章分類で推定)させ、政党支持の傾向を分析した。なお、評価の対象としたサンプルは、キーワード「選挙」を含むツイートを、第49回衆議院選挙の前後、および、第26回参議院選挙の前後について、それぞれ3つの時点を設定し収集したもので、総計780万件となる。結果としては、当選者数比と比較すると、野党と判断されるツイートが多かった。“ツイッター世論”と選挙結果とは一致しないということが示唆された。この不一致が、AIによる分析の欠陥なのか、そもそもツイッターという言論空間が実際の政治空間とずれているからなのかについては今後の分析を必要とするが、不自然に高いリツイート率の出現するタイミングや、投稿時間の特定の時間帯への集中などから、組織的なツイッター世論操作活動が存在していることも窺われた。 本研究全体としては、社会調査データの再分析にAIを使用する試みについては、社会調査程度のサンプル数では簡単に過学習となることがわかったので、やはり、AIの使い所はビッグデータとなると言わざるをえない、というのが結論となる。
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