2021 Fiscal Year Research-status Report
要介護高齢者の尊厳を最期まで保持する為の自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト
Project/Area Number |
20K20786
|
Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
山下 喜代美 東京福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (80438754)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
先崎 章 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20555057)
橋本 由利子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30343453)
櫻井 恵美 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (50760097)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 安寧支援 / 尊厳の保持 / 高齢者介護 / 介護実践 / 特別養護老人ホーム / 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象者となる特別養護老人ホーム(以下特養)介護福祉士へのインタビュー調査を引き続き行い、インタビュー内容を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)手法に基づいて分析した。分析テーマは「特養入居者のできることであっても手伝う理由」とした。また、飽和化の確認のための追加調査等を実施し、エキスパートレビューを受けて特養における介護実践の概念化を図った。これにより21概念と7カテゴリーを生成し、結果図、ストーリーラインを作成した。 この結果から、「特養入居者のできることであっても手伝う」という介護のあり方は、ケアの本質である「相手にとっての善」(早川,2011)を模索した結果であり、特養入居者の尊厳を保持するためには「自立支援」と同時に「穏やかに安らぎを感じて生活できるようにするための支援(安寧支援)」の必要性があると考えられた。さらに特養介護福祉士の語りには、手伝うことで次は自分でやってみようと思えるようになるのではないか等があり、入居者のできることであっても手伝うという行為は自立支援も視野に入れた介護のあり方でもあった。この研究内容については、2021年8月に行なわれた第29回日本介護福祉学会大会で発表した。その後論文を作成し、投稿中である。 一方、特養入居者へのインタビューは、感染状況をふまえ、現在断続的に実施中である。特養は面会制限が続いているため、対面でのインタビュー調査が実施できたのは、これまで1名であった。オンラインでのインタビュー調査では、特養職員が隣に付き添っているため、本心を語れているのかという点で疑問が残る。本研究においては、当事者である特養入居者の思いを知ることは重要であるため、なるべく対面でのインタビュー調査が実施できるよう新型コロナウイルス感染症の蔓延状況を踏まえ、施設と調整中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の発生と感染拡大により、研究開始時期から遅れが生じている。2021年度も新型コロナウイルス感染症の収束はなく、感染防止対策が継続して行われていたいた。これにより特養介護福祉士の日常業務のひっ迫よる人員確保の困難な状況は続き、入居者への面会制限も継続していた。本研究は、特養介護福祉士と特養入居者へのインタビュー調査を出発点とする研究であるため、新型コロナウイルスの感染症の蔓延による特養への影響は、そのまま研究の進行に影響を及ぼしている。 特養介護福祉士へのインタビュー調査は、時間を要したもののオンラインで実施し、特養の介護実践として概念化することができた。一方、特養入居者へのインタビュー調査は、2020年度にオンラインで6名、その後調査方法とサンプリング方法を再検討して2021年度はオンライン5名と対面1名実施した。データを分析する上では、さらに対象者を増やす必要がある。入居者のオンラインでのコミュニケーション能力やインタビュー環境を踏まえると対面でのインタビュー調査が望ましいが、感染防止対策として特養は家族であっても面会を制限している状況にあり、特養職員の業務も多忙を極めていることなどから、インタビュー調査にはさらに遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況としては遅れが生じているが、基本的には当初の研究計画書に基づいて進めていくこととする。大きく遅れているのは、特養入居者へのインタビュー調査であるが、安寧支援を構築する上で、当事者の思いを明らかにすることは重要なことであるので、感染状況を踏まえつつ感染防止対策を講じ、施設と相談の上で可能な限り対面でのインタビュー調査を実施できるように進めていくこととする。 安寧支援の概念化については、遅れてはいるが特養介護福祉士へのインタビュー調査の分析から、21概念7カテゴリ―を生成し、結果図、ストーリーラインを作成した。現在は、概念ごとに支援内容の具体化と介護の視点の明確化を図っている段階である。今後は特養に勤務している研究協力者と話し合いの機会を設け、具体的な支援内容をさらに検討していくこととする。この具体的な支援内容については、第30回日本介護福祉学会大会での発表を目指す。 当初の計画では、2022年度はこれまでの結果から「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の理論生成を行うことになる。まず最初に「案」を作成し、特養介護福祉士への研修会を開催する。ここで特養介護福祉士からの意見や評価を受け、さらに検討を重ね理論を確立していくこととする。この研修会については、前述の学会での発表とそこでのディスカッションを経て2022年度末に開催すること目指して進めていくこととする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、特養介護福祉士へのインタビュー調査は対面ではなくオンラインで実施した。そのため施設に訪問するための交通費が不要となった。特養入居者へのインタビュー調査もオンラインであったり、調査自体ができていない状況にある。そのための交通費、テープ起こしにかかる費用が予定より少なくなっている。インタビュー調査は今後も継続して実施していくため、翌年度使用予定である。また、学会発表のための旅費については、日本介護福祉学会の開催がオンラインであったため、旅費の必要がなかった。 次年度は、特養入居者へのインタビュー調査とその分析を進めていく。質的研究を多角的に行うために関係者会議を開催し、専門知識の提供の機会を設定する。さらに「自立支援から安寧支援へのパラダイムシフト」の理論生成や支援内容の具体化、介護の視点を作成する上で、多角的な視点は欠くことができないので、専門知識の提供、研究協力者との会議の開催と運用、学会発表等に関して研究費を使用する予定である。 2022年度末には、「安寧支援モデル」の構築の最終段階として、特養介護福祉士を対象とした研修会を開催する予定である。この研修会で使用する資料の作成として研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)