2021 Fiscal Year Research-status Report
「災害報道3.0」の課題を整理するーデジタル時代のジャーナリズム再定義に向けて
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20K20790
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
奥村 信幸 武蔵大学, 社会学部, 教授 (00411140)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | ジャーナリズム / ニュース / 災害報道 / 防災報道 / リスクコミュニケーション / データ / 避難情報 / 安心 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究協力者と1から2カ月のサイクルで研究会・意見交換を実施し、地方メディアや地方で災害情報の共有を目指すプラットフォームづくりに関わるNPOの幹部らとオンラインでインタビューなども行い、災害時に必要となる情報をいかにデータ化して共有できる可能性があるかについて検討した。 災害のフェーズ(平時の予防対策、台風が接近してくるような準備段階、地震や津波の発生、大雨や洪水の発生などの発災段階、緊急避難、緊急避難で安全を確保した上での避難所などでのサバイバル、ライフラインやインフラの復旧、数年かけての道路などの復興)によって、どのような情報が発生し、共有される必要があるのか、タイムラインに従って整理した。さらに上記で分類した情報のうち、①すでにデータでのやりとりがなされているもの、②データ化が可能ではあるがなされていないもの、③データ化が困難だったり、統一化が難しいもの、を分類したうえで、情報を持つ(発信する責任がある)主体は誰か、整理、伝達、集積などを負担すべき主体は誰になるかを整理した。そのうえで、上記の①から③の中の②について、データ化がなされてこなかった原因、今後データ化して情報の伝達をより円滑にするための課題、責任の所在、コストなどについて列挙し整理している。 もし、災害情報の大部分がデータによってやりとりが可能であるならば、スマートフォンなどのデバイスが普及した現在、伝統的なニュースメディア(特に放送局)が気象や避難データなどを独占的に手に入れ、選択して伝達する従来の情報流通ルートよりも、データを持つソースが直接アプリなどにデータを供給、ユーザーが自分の地理情報などに従って、オンデマンドで取り出すような形の方が、はるかに効果的である。 その時にメディアが自負してきた「災害ジャーナリズム」のありかたは再定義を迫られる。その方向性について考えて行くのが目下の目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナの影響により、アメリカの郡(カウンティ)単位で整備されている緊急災害避難システムや、英BBCのリスク管理システムなどに対する視察ができず、また、日本国内のメディア視察や意見交換などもオンラインでしか行えなかったことから、現実に即した記述で課題を整理する作業が非常に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた海外の視察として、新型コロナウィルスによる渡航制限解除に合わせて、少なくともアメリカ・ミズーリー州のコロンビア郡の視察およびミズーリ-大学ジャーナリズム大学院関係者との意見交換は実施したいと思っている。 またデータジャーナリズムの動向を知るために、対面での大会が再開するONA(オンライン・ニュースアソシエーション:9月米ロサンゼルス)、Global Fact9(ファクトチェック国際会議:6月ノルウェー)などに参加し、最新の動向をつかむ一方、さらなる視察先の開拓を行うように考えている。 成果発表に関しては、これまでまとめたデータ情報の分類整理というコンセプトワークの成果と、今後の課題の明確化のために複数の学会発表を行うよう準備をしている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる行動制限、海外渡航制限により、当初計画していた視察やインタビュー調査などができなかったため。次年度分と合わせて、感染状況を見ながら、今後の視察やインタビュー調査の旅費として使用する予定である。
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