2022 Fiscal Year Research-status Report
Role of Gender Minorities in Economic Development-Comparative Studies of Two Major Religions in Southeast Asia
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20K20792
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大門 毅 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80329333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 真里 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (90334995)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | SOGI / LGBTq / かいほつ(開発) / マレーシア / パラオ / モロッコ / 法と経済学 / 宗教的寛容性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は渡航制限の一部解除により、研究対象国(東南アジアを中心とする途上国)におけるフィールド調査が可能となった。研究テーマの変更はないが、研究が進むにしたがい本研究の題名が示すような「性的マイノリティ」(sexual minority)の多角的理解が必要であるとの認識に至り、広くSOGI(sexual orientation and gendenr identity)(性的指向及びジェンダー自認)の多様性に分析の視点を当てなおすことにより、本研究の方向性が明確化した。テーマの特殊性から所属機関や氏名を伏せること条件にする関係者も少なくなく、そのとりまとめ方法には最大の注意を払った。また、2023年3月には英国放送協会(BBC)により、日本の有力芸能事務所による未成年・児童に対する性加害が報道されたことにより、問題の本質は途上国のみにあらず、日本社会にも根深く存在することを認識させられることとなった。本調査の主要な視座であるdevelopmentは、単に経済的な発展レベルないし開発レベルを意味するのではなく、仏教界では「開発」(かいほつ)という概念として人間の内面・精神面における成長を含めた意味合いを持つ。その点、心理学でのdevelopmentの射程とも符合する。イスラム圏におけるSOGI分析として、マレーシア及びモロッコを取り上げた。パラオ(人口の8割がキリスト教)を現地調査としたのは、2021年度までにネットで調査した国(フィリピン、タイ、台湾)以外にも視点を拡げることとしたことである。パラオの法律では、イスラム教国(マレーシア、モロッコなど)と異なり同性愛は非合法ではないが、伝統的な家族の価値観が重要視されており、人々が自身の性的指向やジェンダーについて話すことはないが、その背景を探るためである。成果は、法と経済学会(2022年10月、ソウル大学)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、イスラム圏におけるSOGI分析として、マレーシア及びモロッコを取り上げた。パラオを現地調査としたのは、2021年度までにネットで調査した国(フィリピン、タイ、台湾)以外にも視点を拡げることとしたことである。パラオの法律では、イスラム教国(マレーシア、モロッコなど)と異なり同性愛は非合法ではないが、伝統的な家族の価値観が重要視されており、人々が自身の性的指向やジェンダーについて話すことはないが、その背景を探るためである。研究成果は、法と経済学会(2022年10月、ソウル大学)で発表した。一方、従来進めてきたインタビュー(沖縄、台湾、フィリピン、タイの4000名調査等)を中心とする一次データを書籍化(英語・日本語及びフランス語)する準備が整った一方で、COVID-19による渡航制限が徐々に解除されるに従い、もう1年程度の研究期間の延長があれば研究成果の具体化・可視化がさらに充実されるであろうとの予測がたったため、共同研究者とも相談の上1年の延長を申請することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延長していただいたことにより、2023年度は研究成果の書籍化に集中することが可能となった。また、インドネシアやシンガポールなど(渡航先や時期については、研究テーマとの関連性や予算的現実性を精査して)現地調査を行い、シンガポール国立大学ないし南洋工科大学での最終成果・研究発表、出版の可能性を模索する。但し、これらの国におけるSOGIに関する表現の自由に対する法的規制があるかないか、ある場合の規制内容などを事前に確認し、平穏無事に学術活動を行うことを心がける。また、内心について詮索するような問いは避け、これまで以上の配慮と注意を払いながら、アンケート調査を実施する前には従来も遵守していたように、人に対する研究の倫理規定を明記し、誤解を生む余地がないように注意したい。仮に誤解等が生じた場合には、学内の関係機関や弁護士をはじめとする学外専門家の助力を得つつ、丁寧に説明を行いながら円滑に研究を進めるようひきつづき努力を真摯に行う所存である。
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Causes of Carryover |
共同研究者による一部返金により未使用残が生じた。2023年度は出版のための準備ないし、追加調査国を選んで現地調査、発表することを計画している。
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