2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における勤労青年の教育・教養文化に関する歴史社会学的研究
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20K20794
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
福間 良明 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70380144)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 勤労青年 / 教養主義 / 学歴 / 格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、勤労青年(義務教育を終えて就職した青年)の教育の場であった青年学級・工員養成所・定時制高校の戦後史を洗い出し、彼らの教育・教養文化の変容プロセスを歴史社会学的に検討するものである。戦後の学校教育史については、教育史・教育社会学において重厚な蓄積が見られるが、「義務教育以上に進めなかった勤労青年層が、学校や地域、職場において、どのような教育・教養に、なぜにふれてきたのか」については、時系列的な検討はもとより、史料の発掘・整理も進んでいない。勤労青年は、青年学級(おもに農村部)や夜間定時制高校(おもに都市部・工業地域)において教育・教養にふれていたほか、工員養成所(大手製造業)でも工場実習以外に国語・文学、社会、時事問題など人文社会系の知に接していた。だが、これらの戦後史を教育・教養、格差、労働の観点から横断的に見渡した研究は皆無である。 全日制高校への進学率は、1955年で47.6%、1965年でも66.6%に過ぎず、中学卒業後に労働に従事した青年たちは、高度経済成長中期までは決して少なくはなかった。そのことを考えれば、教育・教養の戦後史を問ううえで、勤労青年の存在を見落としてはならないはずである。こうした問題意識のもと、本研究は戦後の初期から高校進学率が8割を越える1970年までの勤労青年の教育・教養文化史を掘り起こし、そこに彼らを取り巻く社会環境(農村の人口過剰、労働、格差など)がどう関わっていたのかを明らかにする。 こうした問題意識のもと、2022年度は追加資料の収集を中心に行った。2020年度・2021年度は新型コロナの関係で資料収集出張に出向くことがどうしても限られたが、2022年度は青年学級が盛んだった山形や人生雑誌読者サークルの資料が多い山梨のほか、国立国会図書館(東京)、長崎県立郷土資料センター(被爆体験と勤労青年文化)などで資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、2020年度・21年度の資料収集が制約された。しかしながら、2022年度になって資料収集に行きやすくなったことから、地方勤労青年教養文化史資料の入手に一定の進捗が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は追加資料の収集を終えるのとともに、これまでに集めた資料の総合的な分析を進め、論文等の形で研究成果をまとめたい。 追加資料としては、国会図書館(東京)や都立図書館(多摩)で地方勤労青年誌等の資料収集を行うほか、金沢、静岡、長崎等で漁村の青年教養文化資料の収集を行う。あわせて、戦争体験との関わりで、広島・長崎・沖縄等でも資料収集を進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の関係で、2020-21年度に十分な資料収集を行うことができず、そのことが結果的に次年度使用額が生じた要因となった。また、その他、オンライン会議(研究会、学会を含む)が可能になったことで、出張旅費の抑制が可能になり、2022年度までの支出を抑制することができた。 2023年度は、資料収集旅費や資料購入(古書)、研究書購入が主たる使途となる予定である。
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