2020 Fiscal Year Research-status Report
地方で増え続ける外国人児童生徒を地域で支える遠隔支援モデルの構築
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20K20801
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
高橋 亜紀子 宮城教育大学, 教員キャリア研究機構, 教授 (10333767)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 外国人児童生徒 / 遠隔支援 / 日本語学習 / 教科学習 / 連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外国人児童生徒の受け入れや支援の体制が整っていない、地方(宮城県)のごく一般的な学校に対して、専門家と外部の支援者とをつなぎ、子どもと教員を支援する体制づくり、「遠隔支援モデル」の構築を目的とするものである。令和2年(2020)年度は、(1)全国の先行事例などの先行研究を整理し、(2)宮城県における外国人児童生徒の状況を調べ、(3)遠隔支援モデルを実施するための関係者とのネットワークづくりを行い、(4)遠隔支援モデルの1つの試みとして、大学と地域の国際化協会とが連携して「オンライン教室」を開催した。 (1)については、全国の外国人児童生徒の受け入れや支援の体制についてのハンドブックなどの資料や先行研究を収集、閲読した。また、外国人児童生徒の日本語教師を養成する研修にも参加し、特に、学校内や学校教員が抱える課題について学ぶことに努めた。(2)については、県内の外国人児童生徒を担当する教員向けの研修を支援し、各学校の教員が抱える課題を把握した。また、外国人児童生徒を受け入れている学校を複数訪問し、校長と教員への聞き取りを行った。さらに、その中からモデル校を1つ選び、校長、担任、日本語指導教員への聞き取りのほか、子どもの日本語能力の実態把握、支援の方法、学校内の連携のあり方などについて検討を重ねた。(3)については、県内の大学、県及び仙台市の国際化協会、子ども支援団体と顔の見える関係を築き、連携できる体制を作ることができた。(4)については、(3)の連携で「オンライン教室」を3回実施することで、県内で支援を必要としている子どもたちのニーズを把握した支援を行うことができた。しかし、まだ県内全体の状況が把握できていないため、支援のモデル校を増やすとともに、支援が行き届かない子どもに対するオンライン教室を開催し、支援の機会を増やすことも目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である令和2(2020)年度には、上の(1)、(2)、(3)、(4)に加え、(4)のオンライン支援による課題の整理と、(5)学校の教員がオンラインで利用できる研修や資料、リソース教材などの調査を行い、不足しているものの検討を計画していた。(1)~(4)についてはおおむね順調に進展しているが、(4)の課題の整理と(5)については、まだ開始したばかりであり、研究を進めていく必要がある。 教員に対してはまだ十分な調査と支援方法についての検討ができていないが、(1)から(4)までを実施することで、県内の学校での受け入れの状況や外国人児童生徒の実態とニーズの把握から、課題や論点などを整理することができた。さらに、ネットワークも構築することができたことから、子どもと教員の両方を支援する体制づくりを具体化させる準備は整った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度は、オンラインによる支援における課題の分析と教員を支援する方法の検討((4)及び(5))を実施する。(5)の教員向けの支援として考えているのは、教員が子どもの指導をする際に必要な方法や内容を短い時間で簡単に学べるようなリソース型の教材の作成であり、このひな型を作る予定である。はじめは日本語や教科の指導に関する教材を検討していたが、これまでの調査の中で、日本の学校という異文化の環境で学ぶ子どもや保護者への対応に苦慮している教員が多いことが明らかになってきた。そこで、異なる価値観や習慣を持つ子どもや保護者と日本の学校の間で、実際に起きている摩擦や衝突なども取り上げ、それに対応する内容も加えたいと考えている。また、(6)子ども向けの支援として、オンライン教室を継続して行い、子どもの課題とニーズを分析し、学校との連携ができるような方法を模索する。さらに、数年後に教員となる学生にオンライン教室に参加してもらい、支援に見られた課題を分析することによって、子ども支援に必要な情報や支援の方法を(5)の教材にも盛り込むことを目指す。
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Causes of Carryover |
令和2(2020)年度に開始をする予定であったオンライン支援上の課題の分析とオンライン上で教員が利用できる資料の収集と整理がまだ実施できていない。そのため、人件費や謝金等が計画通りの支出にはいたらず、残額が発生した。また、新型コロナの感染拡大により、学校訪問などの調査が思うように実施できておらず、旅費の支出も計画通りに使用できなかった。物品費もパソコンやタブレットなどの端末、Wi-Fiなどの貸し出しを予定していたが、現在それぞれが持っているものを使って試験的に支援が行えたので、使用できなかった。 令和3(2021)年度は、令和2年度に実施できなかった課題の分析、資料収集と整理に加え、教材のひな型作成のための費用、支援のモデル校を増やして訪問するための費用、オンライン教室の継続的な実施に関わる物品費用、などに充当したいと考えている。
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Research Products
(3 results)