2020 Fiscal Year Research-status Report
在来知を”見える化”するー島嶼世界の「遊び仕事」継承に向けた環境教育ツールの開発
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20K20802
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
溝田 浩二 宮城教育大学, 教員キャリア研究機構, 教授 (00333914)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 在来知 / 環境教育 / 遊び仕事 / 継承 / 島嶼世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における従来の環境教育は、そのフィールドを国内の環境に求めながらも、ベースとなる環境思想や環境教育プログラムは先進地である欧米をモデルとしてきた。その反省から、日本独自の自然観や生活知を基盤とした環境教育の構築が待望されており、日本の農山漁村で営まれてきた「遊び仕事(副次的・周縁的生業、マイナー・サブシステンス)」に大きな期待が寄せられている。その理由は、「遊び仕事」には持続的な生物資源利用に関する在来知が凝縮されており、それを環境教育とをつなぎ合わせることによって地域に残る伝統技術や文化を巻き込んだ新たな環境教育が展開できる可能性があるからである。しかしながら、「遊び仕事」の世界はきわめて可視化しづらく、次世代に継承されないまま消失の危機に瀕している。本研究では、島嶼世界の「遊び仕事」に焦点を当て、人と自然との豊かで有機的なつながりを“見える化”することで、「遊び仕事」を次世代へと継承していくための環境教育ツールを開発する。島嶼世界のモデルとして、対馬(長崎県)と西表島(沖縄県)という”似て非なる”生態系を有する島嶼を取り上げ、それぞれの島嶼で展開されている「遊び仕事」を比較することで、「遊び仕事」 が二つの島嶼世界に果たしている役割を明らかにしていく。初年度にあたる2020年度は、対馬および西表島において予備的なフィールド調査(参与観察、聞き取り調査など)を行うとともに、網羅的な文献調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響によって離島への渡航が著しく制限されたものの、現地でのフィールド調査をほぼ研究計画どおりに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3点について重点的に取り組む計画である。 (1)「遊び仕事」に関する文献調査:対馬および西表島で営まれてきた「遊び仕事」に関する文献アーカイブを作成することを目的として、両島の「遊び仕事」に関する文献資料を網羅的に収集する。 (2)「遊び仕事」に関するフィールド調査:対馬および西表島における生物資源利用の知恵と技術(在来知)を把握することを目的として、両島で「遊び仕事」に関するフィールド調査(参与観察、聞き取り調査)を行い、そこに内包される在来知を明らかにし、「遊び仕事」が両島の生態系保全に果たす役割を評価する。 (3)「遊び仕事」に関する環境教育ツールの開発:文献調査ならびにフィールド調査から得られたデータに基づき、対馬および西表島の「遊び仕事」を主題とした環境教育ツールの開発に取り組む。「遊び仕事」に関するデジタルアーカイブ(文献情報、写真、動画、解説を含む)を 構築することにより、人と自然の有機的なつながりや在来知を“見える化”する環境教育ツールを開発する。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナウィルス感染症の影響により、さまざまな想定外の事態が生じた。具体的には、フィールドワークが大きな制約を受けた反面、デジタル環境が急速に整備・改善されたことにより、旅費、物品費(特にフィールドワークで使用する消耗品)、その他(紙媒体の文献複写)に残額が生じ、逆に、人件費・謝金(デジタルデータの入力)に多くの経費を費した。その結果として、次年度使用額が生じてしまった。2021年度も引き続きフィールドワークが制約を受ける可能性もあるが、その場合は「遊び仕事」に関するデジタルアーカイブの作成を重点的に行うことで予算を適正に執行したい。
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