2021 Fiscal Year Research-status Report
発達障害等を持つ交換留学生に対する就学支援モデルの開発ー多文化共生に向けて
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20K20839
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 久美子 長崎大学, 留学生教育・支援センター, 准教授 (70295111)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 合理的配慮 / 発達障害 / 交換留学生 / 受け入れ体制 / 修学上の支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も引き続きコロナの影響を受け、留学生に対する日本政府の水際対策がほとんど緩和されず、研究の中心となる「交換留学生」が来日できない状況が続いたため、研究は思うように進行できなかった。 今年度は昨年度の研究実績(合理的配慮が必要な交換留学生を初めて受け入れた2013年度から2019年度までの本学での受け入れにおける問題点の整理と分析)をもとに、まず、合理的配慮が必要な交換留学生の修学上の支援に関わる受け入れ体制の整備について、受け入れ前(応募から来日まで)と受け入れ後(留学期間中)に分けて、時系列に整理し、整備が必要な部分について必要な部署と協議を行った。受け入れ前については主として協定校の関係者とオンラインで協議を重ね、受け入れ後については留学生教育・支援センター担当者及び障がい学生支援室と話し合いを持ち、現体制において実際の受け入れ時に生じるリスクについて再検討を行った。また、協定校での実地調査については昨年度に続き今年度もコロナの影響で実施できていないが、本学の協定校で合理的配慮の実施体制が整備されているオランダのライデン大学における合理的配慮の在り方、また、アメリカの大学における合理的配慮の在り方についてオンライン等を通じて調査を実施した。特にライデン大学とは日本学を専攻する学生を対象とした交換留学プログラムを提携し、留学生教育・支援センター所属の交換留学生として受け入れてきており(2020年度・2021年度はコロナのため中止)、また、その中には合理的配慮を必要とする学生が毎年存在することから、調査及び協議対象として中心に据えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度も引き続きコロナの影響を受け、留学生に対する日本政府の水際対策がほとんど緩和されず、2022年度中は研究の中心となる「交換留学生」が来日できない状況が続いたため、研究は大幅に遅れたままである。 本研究の目的は「障害を持つ留学生」、特に発達障害等の「目に見えない」障害を持つ交換留学生がその限られた期間中に留学目的を十全に達成できるような教育・支援体制の構築を行うことであるが、この中の受け入れ体制の整備に関する部分についてはこれまでの調査で幾つかの問題点が明らかにされ、2022年度の交換留学生受け入れ再開に向けて整備のための協議が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年に入り、留学生に対する政府による水際対策が大幅に緩和され、2021年度留学予定者で母国で待機中であった者については早ければ3月中に、2022年度前期から留学を予定していた者についても早い者は4月中に来日が可能となった。ライデン大学日本学を専攻する学生を対象とした交換留学プログラムも2020年度・2021年度と2年続きで中止となっていたが、2022年度についてはいったん中止が決まったものの、水際対策の緩和を受けて3月に入って急遽再開が決定され、予定されていた15名全員が来日することとなった。この中には合理的配慮が必要される留学生が数名含まれるため、昨年度から協議を重ねた方法に従い受け入れを開始したところである。 よって、次年度については「障害を持つ留学生受け入れ」の問題点とその対応に関する調査を実施できる見込みである。まず日本語教育については当該学生が受講する科目の担当教員に対して面接調査(半構造化面接)を実施し、日本語の授業に関するクラス運営上の問題点、学生の支援に係る問題点等の洗い出しを行うと同時にプライバシーに配慮しながら当該学生の同意の下、障がい学生支援室と協力しつつ、当該学生に対し受け入れ・支援体制及び支援状況に関する調査を実施する予定である。また留学支援課の受け入れ担当者に対して本年度受け入れ時の支援体制について面接調査を実施するとともに、障がい学生支援室の合理的配慮文書担当教員に対して面接調査を実施し、その結果をもとに大学としての受け入れ態勢の整備を進める。 海外における調査については、状況が許せばライデン大学における障害を持つ学生に対する支援体制について実際に施設等の見学を行うとともに、同大学における障害を持つ留学生に対するこれまでの対応等について実地調査を行うこととする。 上記の調査結果をまとめ、年度後半に関係学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度も2020年度に引き続きコロナの影響を受け、留学生に対する日本政府の水際対策がほとんど緩和されず、研究の中心となる「交換留学生」が来日できない状況が続いたため、研究は大幅に遅れたままである。また、予定していた会議等についてはオンライン実施となり、さらに、国内外での実地調査、特に海外の協定校での実地調査等が行えず、予算もほとんど未使用のままの状態で、そのほとんどを次年度に繰り越すことになった。 2022年度については交換留学生の来日が再開したため、「障害を持つ留学生受け入れ」に関する調査を実施できる見込みである。まず、面接調査であるが、①合理的配慮を必要とする受講生を担当する教員、②合理的配慮を必要とする交換留学生、③障がい学生支援室の教員、④受け入れ担当事務、に対して支援体制及び支援状況に関する面接調査を適宜実施する予定である。(面接調査のテープ筆耕:外注) 海外における調査については、状況が許せば、①オランダのライデン大学における実地調査(障害を持つ学生に対する支援体制について施設の見学)、②同大学における障害を持つ留学生に対するこれまでの対応等についての調査、③配慮を受けた留学生に対する帰国後のフォローアップ調査、を実施する。同様に可能であれば参加予定であった海外の会議に参加し、情報収集及び研究成果の発表を行う。(旅費・会議参加費等が必要)
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