2022 Fiscal Year Research-status Report
発達障害等を持つ交換留学生に対する就学支援モデルの開発ー多文化共生に向けて
Project/Area Number |
20K20839
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 久美子 長崎大学, 留学生教育・支援センター, 客員研究員 (70295111)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
Keywords | 合理的配慮 / 発達障害 / 交換留学生 / 受け入れ体制 / 修学上の支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
障害を持つ留学生、特に発達障害等の「目に見えない」障害を持つ交換留学生がその限られた期間中に留学目的を十全に達成できるような教育・支援体制を構築をするために、2022年度の交換留学生受け入れ再開に向けて関係部署と受け入れ体制整備のための協議を進めていたが、2022年度は政府の水際対策緩和を受け、交換留学プログラムも3年振りの実施となった。 そこで、2022年度は2021年度までに明らかになった受け入れ体制の問題点の中で、関係部署等との協議により変更を加えた点について実際に有効に機能するかどうか検証を試みた。変更点であるが、具体的には、①派遣元大学で合理的配慮を必要としていた学生については本人の承諾の下、派遣元大学との情報の共有を行い、入国前に本学のカウンセラーとの面談日時を設定し来日後速やかに面談を実施すること。②合理的配慮がすぐに実施できるように、基本的には派遣元大学で実施されていた配慮内容を踏襲すること。③プログラムコーディネーターは障がい学生支援室のカウンセラーと定期的に連絡を取り、配慮の必要な学生への緊急対応についても速やかに実施できるようにすること。④プログラムコーディネーターはプログラムの科目を担当する他の教員、特に非常勤講師と連携し、別室受験のための教室の手配等を統括する役割を担うこと、である。 プログラム終了後に合理的配慮を必要とした学生に対してアンケート調査及びインタビュー調査を実施するとともに、障がい学生支援室のカウンセラーとともに変更を加えた今年度の支援体制について振り返りを行った。その結果、今年度実施した変更点については概ね有効に機能することが明らかになったが、緊急時の際には受け入れ担当事務室との連携体制をより強化する必要があることが示唆された。この結果については2022年度国立大学留学生指導研究協議会の研究会において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナの影響で主たる調査対象である交換留学プログラムが2022年度前期になって再開することができた。このプログラムはコロナの影響を受け、研究開始年度の2020年度及び2021年度と2年間連続で中止となっていたものである。プログラム再開及び交換留学生の来日が始まったことにより、合理的配慮を必要とする交換留学生に対する質問紙調査及びインタビュー調査を実施することができ、漸く実質的な研究に入ることができた。 しかし、国内及び海外における実地調査については未だ実施できていない状態である。本来、本研究は2022年度が最終年度であったが、上述したように研究が大幅に遅れていたため、1年間の延長を申請し受理されたので、2023年度は予定していた国内・海外での実地調査等を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本学における国内での移動制限、また、海外渡航制限等も基本的に撤廃されることとなったため、2020年度以降特に実施が困難であった国内及び欧州での実地調査(ライデン大学等)を行う予定である。 これまでの調査で旧国立大学において特に合理的配慮としての「試験時間延長」と「別室受験」の際の試験監督(教員)と教室確保が問題となっていることがわかっている。欧米の大学ではテストセンターがこの役割を担っているようである。そこで、実際にオランダのライデン大学、スウェーデンのストックホルム大学等を訪問し、合理的配慮に関係する部署(障害センター、テストセンタ―等)を見学するとともに、実施担当者との面談による情報収集を行う。また、それらの施設や設備、支援のためのシステムを日本の大学にどのように導入することが可能かを検討し、その分析結果については学会等で発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究開始年度であった2020年から本研究の分野である国際教育交流関連はコロナの影響を強く受け、ほとんどの交換留学生の入国がストップするとともに、参加を予定していた関連する国際学会も中止、もしくはオンライン開催となり、同時に予定していた国内外での実地調査も難しい状況が続いていた。2022年度についても自由に移動できる状況ではなかったため、使用予定であった予算がほぼ使えない状況であった。2023年度からは国内外での移動制限がほぼ撤廃されるであろうことから、これまで実施できなかった国内外での実地調査を行う予定である。まず、年度前半は海外(ライデン大学・ストックホルム大学等)で調査を実施し、国内では現時点で既に協力関係にある国立大学法人を訪問し、受け入れ関連部署の担当者と情報共有し、欧州の大学での支援体制をどのように応用できるか、協議を行う予定である。9月は欧州で開催される国際会議(EAIE)に参加を予定している。年度後半はこれまでの調査から明らかになった点について関連学会で発表する。
|
Research Products
(2 results)