2021 Fiscal Year Research-status Report
コンジョイント分析理論の応用によるインクルーシヴ教育の数理モデル開発
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20K20849
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
眞城 知己 関西学院大学, 教育学部, 教授 (00243345)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 数理モデル / インクルーシブ教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は国内外でのデータ収集調査を予定していたが、個体要因と環境要因との相互作用の数理モデル化のために必要なデータ収集がすべて協力対象から断られてしまったために、やむなく特別支援教育に関わる制度のダイナミクスを数理モデル化する補完的な研究を実施した。2021年度は通級による指導(1993年度~)の対象児童生徒数の増加をモデル化する作業を行い、各障害種別について三次式での近似モデルを作成した。これによって今後の通級による指導の対象者数の予測を立てた(A)。また、過去の各年度の出生数に占める7年後の小学校入学者数の比率の変動に関する数理モデルを作成して、出生数に対する就学者数の比率の推定式を作成した。これを利用して国立社会保障・人口問題研究所の将来の人口予測を参照した将来の就学者数の予測を立てた(B)。そして、Bに占めるAのうちで通級による指導の対象となっている「発達障害」(学習障害、AD/HD、及び自閉症の合計値)のある児童生徒数の割合を導いた。その結果、おおむね2034年前後くらいに現在の「発達障害」のある児童生徒の学齢推定割合であるおよそ6~6.5%となることが予測された。2021年度の研究からは、本研究の主題である環境要因と個体要因とのダイナミクスの数理モデル化による学校改善の視点の導出に関して、とりわけ特別支援教育制度の施行から現在までの傾向が「通常学校における障害児教育の拡大」のみに大きく偏っている状況にあることを示した。インクルーシブ教育の展開のためには通常学校における「環境要因」の改善・変容が不可欠であるにも関わらず、現在の傾向はインクルーシブ教育の展開について、通常学校において「特別な支援」を提供することに論点が置き換えられるという問題の一端を数理モデルを用いて浮かび上がらせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、国内の複数の学校における調査を予定していたが新型コロナウイルス感染症が収束しなかったためにすべての調査予定校での調査が中止となってしまった。また、複数のOECD加盟国において調査を実施する予定であったが、予想以上の渡航制限の延長が続いたため現地での裏付け調査が実施できなかったために、研究のもっとも中心的な内容を取り扱うことができなかった。こうしたことから2021年度は研究の要素の中で、「環境要因」に関する条件に関わる補完的な研究を実施することしかできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、新型コロナウイルス感染症への児童生徒の感染状況が収束する見通しが立っていないことから、2021年度に実施した研究結果の国内外の学術雑誌への投稿を行う。その際、2021年度に実施した日本の特別支援教育の傾向についての数理モデル化の作業を特別支援学校と特別支援学級の対象児童生徒、及び学校・学級数の傾向についても行い、制度面での数理モデル化を整える研究の結果についても報告できるようにしたい。この作業を進めながら、国内での調査許可の状況、及び海外渡航の可能性の状況に応じて、当初の研究計画で予定していた研究を少しでも前進させたい。
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Causes of Carryover |
物品費の誤差のため未使用額が発生した。次年度経費と合わせて物品購入費に充てる。
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