2020 Fiscal Year Research-status Report
各種災害に備えた国家強靭化に資する社会変革をもたらす減災リーダー育成の研究
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20K20850
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
清水 壽一郎 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (80294403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 大爾 広島国際大学, 健康科学部, 教授 (60413548)
清水 希功 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (40309662)
井山 慶信 広島国際大学, 健康科学部, 講師 (30368807)
大堀 道広 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 准教授 (50419272)
安福 健祐 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (20452386)
石原 茂和 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (90243625)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 地域減災リーダー / 減災ファシリテータ / 危機管理 / 減災能力 / 避難行動 / オンラインカウンセリング / 多職種連携演習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、災害時に要支援者も安心な共助体制作りを広げるため、高い危機管理能力と救急救命処置や避難所支援等幅広い医療知識・実践力を身につけた大学生を養成することである。災害の危険性を想起する能力を培い、発災時の一連の避難、救命活動、避難所設営・運営、生活再建支援を一貫して活動できる地域減災リーダー養成を、減災ファシリテーターとしてトレーニングした大学生が担うことで、ソフト面の国家強靭化を加速する教育システムの構築を目指す。 初年度は、① (i)地形・地質を調べてその場所の危険性を考える、(ii)渓流において土石流災害の規模や過去の土石流災害の回数,原因等を考える、(iii)山腹崩壊による土石流災害と対策を考える、3つの土石流災害の野外減災教育プログラムを開発・実施した。②地震・津波の被害想定とそれに基づいた研修会をオンラインで実施し、災害に対する意識の共有がいかに重要であるかについて、啓発活動を行った(福井大学公開講座「令和2年度福井大学災害ボランティア研修会」)。③危機管理・減災能力を高める学習教材開発に利用するための避難シミュレーションを実施した。地震・津波による地下街への浸水を想定し、大規模な地下街ではブロックに分割することで避難時間が短縮する効果をシミュレーションにより確かめた。④昨今の新型コロナウイルス感染拡大に対応して、オンラインでカウンセリングを行う際のバーチャル空間の広さがカウンセリングに与える効果を検証し、開放的なバーチャル空間を準備することで、カウンセリングを受ける人が心を開きやすいことが明らかになった。これは、被災地への移動が困難な状況で、被災者へのカウンセリングを行う際に留意すべき貴重な知見である。⑤次年度に全学必修の医療系多職種連携演習において被災時を想定した演習を行うためのシナリオおよび実施プランを立案し、一部先行的に実施し、評価・改良した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】でも述べたように、研究分野を大きく5つの分野に分けて実施している。 まず①の土石流を対象とした野外減災プログラムは、地域の小学校、中学校を対象にプログラムを実施した。実施にあたっては、大学生の減災ファシリテータを養成し、それらのファシリテータが小学生・中学生の野外減災プログラムをファシリテートすることで小学生・中学生の理解が進むことを実証した。②地震・津波による生活圏への浸水被害を想起する力を養うことを目的とした研修を行った。地震・津波によりどの様な地域にどの様な被害が生じるのかを知り、その情報を共有することは、将来の減災リーダー養成に欠かせない経験であることを改めて確認できた。③地下街への浸水シミュレーションにおいて、群衆の動きを予測することで、避難行動の予測とより迅速な避難に有効な誘導法について検討を行った。特に大規模な地下街では、地下街をブロックに分割し、多くの人が集中しているブロックから他のブロックへの誘導が効果的であることを見出した。 ④被災して避難所生活を強いられメンタルの失調を来す方も多い。また、コロナ禍や被災地へのアクセス経路遮断などにより、オンラインでのカウンセリングを行う場合、アバターを利用した仮想空間でのカウンセリングは有効な手段である。その仮想空間の設定でも、窓があることや適度な広さを確保することで、カウンセリングを受ける方も心を開きやすいことを明らかにした。⑤多職種連携演習において、被災を想定したシナリオを作成したこと、さらに平常時の医療・福祉に関する多職種演習を想定して演習を行いながら、その状況で被災したことを想定して各専門職がどの様に行動すべきかを考えさせる演習を準備した。意志の疎通をしっかりと行う為に、この演習は本来対面で予定していたが、コロナ禍を受けてオンラインミーティングでの実施も可能なプログラムへと進化させた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、【研究実績の概要】と【現在までの進捗状況】における5つの分野について、それぞれの研究をさらに発展させるとともに、より実践的な演習への展開も考える。また、それぞれを統合して地域の特性に合致したプログラム展開についても考える。統合については、近い将来に発生が予想されている南海トラフ地震を想定し、地下街を持つ都市部、決壊のリスクがあるため池近くの住宅地、沿岸部の津波浸水が予想される地域などである。本研究で全てをカバーすることは費用、時間、マンパワーの点から現実的では無いため、広島県広島市内あるいは呉市内での想定について検討を行い、それぞれの被害想定と減災リーダーの養成対象とプログラムの内容について精査を行う。 また、それぞれの研究内容について特定の設定について検討を図る。例えば、①において、プログラムの理解を助ける理想的な教材についての検討を行う。②において、豪雨災害時の傾斜地における土石流の流速と破壊力について数値化できるかどうか検討する。③において、豪雨災害時の傾斜地にある住宅街を想定し、避難に際してのDo and Don’t を明示するために、避難行動について検討が加えられるかどうかを検討する。この①~③は密接に連携しており、視覚的に理解できる工夫を図る。 ④において、避難所での被災者の配置について、よりストレスを感じにくくするための密度、パーティションの高さや配置、人や物の動線などを推測できないか検討を図る。また⑤において、DMAT活動についてのシナリオや状況を準備するとともに、実際に避難所を運営した方々とのインタビューを通じた演習についても考える。この④と⑤についても連携しての発展を図る。
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Causes of Carryover |
本年度の研究実施についておおむね予定通りに進捗しているが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大学生向けの演習の実施方法を当初の対面式グループワークから、オンラインミーティング形式に変更しての実施準備を行った。次年度の実施計画に沿って必要物品の再検討を行ったこと、また分担研究者との会議・打ち合わせも本学での実施では無くオンライン会議としたため旅費等についても調整を行っている。新型コロナウイルスの感染拡大による影響は次年度も継続する可能性が高く、本年度に策定したオンラインミーティング形式に対応した判断は正しいものと考える。
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Research Products
(7 results)