2021 Fiscal Year Research-status Report
A neuropsychological study for the relationship between olfaction and social network construction
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20K20859
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
綾部 早穂 筑波大学, 人間系, 教授 (40323232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小早川 達 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (70357010)
樽味 孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40825858)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 社会的ネットワーク / ストレス耐性 / 拡散テンソル画像 / 扁桃体 |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚機能の低下や障害では視覚や聴覚ほどには注目されていないが、食の楽しみが低減して食欲を失するなど健康被害に結び付くような深刻な問題も派生する。また、急速に情報化が進む社会において、人間同士や環境への接触といった有機的な社会的相互作用で生み出される社会的記憶における嗅覚の役割についても未解明である。バーチャルな世界でのにおい知覚の再現、遠隔コミュニケーション場面でのにおい知覚の共有について、その実現が様々に試みられているが、化学物質の再現問題から制約は大きい。対面接触の減少、孤立状況の増加によって、人間の成長過程において物理化学的な社会的相互作用が減少することで、嗅覚系への刺激は減少する。今後、さらなる情報化拡張の社会に生きる人間に対して、においを知覚することが果たす役割は何か、つまり人間にとっての嗅覚の重要性について考える。 令和3年度においては、①普段の生活の中で我々が接触していると想定される様々なカテゴリのにおいの刺激を20種類選定し、実験場面で提示できる方法を検討し、②これらのにおい刺激をどの程度同定できるのか同定能力(ここでは嗅覚能力とする)と普段のにおいへの関心の程度(OAS得点)を測定し、③小中学校時代と現在の親密(複数項目で定義)な友人の数(社会的ネットワークの一側面の計測)、④個人の性格特性、特性不安・状態不安、ストレス耐性を質問紙で計測し、⑤ストレス耐性については唾液コルチゾルの計測、を実施した。嗅覚同定能力と他の指標との関係性を検討する。現在はデータ分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度に実施予定であったヒトの感覚評価(対面実験)はコロナ禍のため実験実施が困難であり、1年遅れで令和3年度にようやく実験が開始できた。ただし、神経連結を計測するためのMRI実験はまだ実施が困難であったため、神経基盤の解明に係る部分が遅れている。令和4年度にはMRIによる計測実験実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
生活臭を20臭選定してその同定能力と、社会的相互作用と関連のある変数を測定して得た昨年度のデータからその関係性について分析を継続する。また、今年度は、この生活臭に加えて、よりエコロジカルな妥当性を考慮して、親しい人の体臭を知らない人の体臭から嗅ぎ分けられるかどうかの能力も併せて測定する実験を予定している。昨年度ストレス耐性の指標としてに唾液コルチゾールの計測を始めたが、分析に不慣れであったために、失敗を繰り返してしまった。今年度はそこから獲得できた経験と知識を活かして計測を継続する。ヒトを対象とした心理実験は、筑波大学人間系研究倫理委員会に実験計画書を提出し、承認を受けた上で実施する。 また、今年度は、産総研でMRI計測を実施し、嗅覚情報処理系と社会的ネットワーク関連の神経系の連結についてMRI計測による拡散テンソル画像分析を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度(令和元年度)は、コロナ禍のため、ヒトと対象とした実験室実験の実施ができず、論文検索や実験準備のための調査のみ実施したため、研究費の使用が抑えられた。令和2年度は初年度からずれ込んだ実験実施には至ったが、当初予定の実験には至っていないため、全体的に1年ずつ予定がずれ込んで(遅れている)いるために、次年度使用額が生じている。
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