2020 Fiscal Year Research-status Report
Beyond the negative effect of working memory training
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20K20861
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| Research Institution | Kyoto University |
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Principal Investigator |
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70253242)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪見 博之 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (70447986)
森口 佑介 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80546581)
前原 由喜夫 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60737279)
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| Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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| Keywords | ワーキングメモリ / ワーキングメモリ・トレーニング / 認知トレーニング |
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| Outline of Annual Research Achievements |
ワーキングメモリとは、様々な心的活動において一時的に必要情報を保持する記憶の働きを指す。この記憶機能をトレーニングすることで、心的活動が促進されるであろうと期待されていたが、そうしたトレーニングの効果は極めて限定的であることが報告されている。また、理論的には、トレーニングの実施により、別の心的活動が低下すること予測されている。本研究では、このワーキングメモリ・トレーニングの「負の効果」の存在を検証することから始め、心的機能に対するトレーニングの考え方を根本から変える新しい心理学理論の体系化に挑戦することを目的としている。この目的のため、2020年度には、ワーキングメモリ・トレーニングの「負の効果」の存在を、2段階トレーニング法を用いて検証した。第1段階では、実験群ごとに異なる記憶課題によるトレーニングを行い、第2段階では、すべての実験群が同じ記憶課題でトレーニングを行なった。第1段階、第2段階それぞれに3日間のトレーニングを行う実験を実施したところ、第1段階における空間性の材料を用いた課題でのトレーニングが、第2段階における言語性の材料を用いた課題の成績を低下させることがわかった（実験1）。つまり、トレーニングの負の効果が確認された。一方で、第1段階における言語性の材料を用いた課題でのトレーニングは、第2段階における空間性の材料を用いた課題の成績を低下させなかった（実験2）。実験1の結果は、2021年1月に開催されたExperimental Psychology Societyの大会において報告した (Ni, Gathercole, Norris, & Saito, 2021)。実験2のデータに基づいた報告については、国際学会への発表申し込みを済ませている。また、中学校で実施したトレーニングの結果のとりまとめとともに、中学生向けに利用できるトレーニング教材の開発についても検討した。さらに幼児から得られたデータの分析を進めることもできた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ワーキングメモリ・トレーニングの「負の効果」の検証から開始し、その敷衍を行うとともに、新たなトレーニング方法を提案しつつ、そうした実証的基盤に基づいて、これまで提唱されてきた認知機能に対するトレーニングの考え方を根本から変える新しい理論の体系化を目的としている。この目的のために、2020年度には、まずワーキングメモリのトレーニング実験を行う必要があったが、新型コロナウイルス感染拡大のため、大学の実験室において実験を行うことや、日本から海外へ渡航して成果を報告することも不可能であった。そのため、当初予定していた通りの実験をオンキャンパスで実施することはできなかった。そこで、Web上で実施可能な実験プログラムを準備し、また、オンラインの実験を実験者がモニターできる体制を整えることで、Web上で2つの実験を実施した。いずれの実験も、60人の参加者が6日間、毎日実験に参加するという過酷なものであったが、実現した。その結果、トレーニングが特定の認知スキルの獲得を促して自動化させるとするという仮定とともに、自動化した認知スキルの適用が不適切な課題においてはトレーニングの「負の効果」が見られるという予測を検証することができた。また、ワーキングメモリをさまざまな教科の文脈の中で簡便にトレーニングできる中学校の教材の開発を、現職の学校教員たちと検討した。さらに、幼児において、音楽プログラムと劇プログラムが、通常の保育プログラムと比べて、一部のワーキングメモリ課題の成績を向上させることも確認した。秋には危ぶまれた本年度の研究遂行は、最終的にはほぼ予定通りに進むこととなった。さらに、国際会議がオンラインで開催されたことにより、研究成果の報告に関しても計画通り行うことが可能となった。
本研究は、以上のように、研究計画に沿ってほぼ順調に進んでいる。
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| Strategy for Future Research Activity |
2021年度の早い時期に、前年度にすでに終えた実験のデータを詳しく解析し、続く実験の詳細を検討する。得られたデータに関しては、そこから導出される成果に基づき、すでに国際学会での発表を1件終えているが、残りの部分ついても国際学会における発表の申し込みを済ませている。この発表を2021年度に行う。また、これらのデータに基づいた成果は、国際共著論文として報告するため、とりまとめを行い、執筆を進めていく。また、長崎大学教育学部附属中学校で実施した認知トレーニングに関する研究の成果を分析して論文を執筆する。さらに、幼児において発見された保育プログラムの効果についての再現性を確認していく。これらの過程の中で、必要に応じて、研究代表者と研究分担者がミーティングを行う。2021年度には、オンキャンパスでの大学生での研究、中学校での生徒を対象とした研究、幼稚園での幼児を対象とした研究を継続するため、経費としては、旅費に加え、研究補助者と実験参加者への謝礼が必要となる。富山大学では、大学生を対象として坪見が、京都大学では、大学生を対象として齊藤が、幼児を対象として森口が、長崎大学では中学生生徒を対象として前原が研究を進めることになっている。なお、新型コロナウイルス感染拡大という国際的な保健衛生上のリスクのため、新たな実験の開始が遅延する可能性も高いが、Web上での実験が成功していることから、研究プロジェクト全体の進行の大きな遅延はないものと考えられる。
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| Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のために、海外渡航および研究代表者および研究分担者の相互訪問が困難となった。そのため、予定していた出張がすべて実施できず、そのための旅費が未使用となった。また、対面での実験も困難となったため、いくらかの実験謝礼が未使用となった。次年度には、国際的な保健衛生上のリスクがなくなり次第、その旅費を使用して、研究代表者と研究分担者の相互訪問により、具体的な実験状況を確認しての研究討議を行うとともに、実験謝礼を用いて追加の実験を実施する計画である。また、国際会議がオンサイトで行われた場合に、海外渡航を行なって、研究成果を報告する。
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Research Products
(2 results)
